神奈川県央地域に位置し、人口4万人に満たない愛川町。だが、外国籍住民の割合は約8%と県内市町村の中で最も高い。山間の小さな町に多くの外国人が住むわけは――。町を歩くと、課題も見えてきた。

 2023年10月時点で同町の外国籍住民は約3300人。出身国別では、ペルー(697人)、ベトナム(473人)、ブラジル(456人)の順で、4位以降も南米や東南アジアが目立つ。

 町は、役場窓口にスペイン語とポルトガル語の通訳職員を置いたり、112言語に対応する翻訳タブレットを導入したりするなど、外国人の相談業務の質の向上を図っている。スペイン語など10言語の母子手帳を交付するほか、病院での診療時に医療通訳を派遣する制度も設けている。

 町内には、僧侶が常駐する在日本ラオス文化センターやベトナム寺院などの宗教施設も点在している。

 同町に外国人が住むようになったのは、30年以上前。同町には、100超の企業が操業する県内屈指の内陸工業団地がある。1990年の入管法の改正により、在留資格「定住者」が創設されると、内陸工業団地に働き口を求め、南米を中心とした外国人が町に住み始めるようになった。さらに、移住した外国人が自分の家族や友人を祖国から呼び寄せるなどしたため、外国籍住民は増え、2006年には2500人を超えた。


外国籍住民のうち、日本人と新たに関係性を築こうとする住民は少ないのだという。

 内陸工業団地などでは直属の上司も外国人で母国語で会話できるケースが多い。「職場で必要ない」と感じるため、日本語を習得しようとする人は多くはない。役場などでは、学校に通うことで日本語を話せるようになった子どもを通訳に使う親もいる。その結果、日本人との交流を進めるよりも、外国人の仲間だけでコミュニティーを完結させて暮らす人は多いのだという。

 町は外国籍住民を「特別扱い」するのは避けている。小林さんは「外国人だからといって特別な支援をしすぎると、元からいる人はどうなるの、となってしまう。最低限の支援はするが、そこから先は『一町民』として接する」と話す。