同社関係者は「経営陣は、旧特定局の問題には踏み込めない」と口をそろえる。背景にあるのは、全国郵便局長会が持つ政治力だ。
 局長会は「郵便局網の維持」などを掲げ、選挙で自民党を支援する。局長の採用に当たっては、会の地区幹部が「選挙はできるか」などを確認し、適任者と認められた人物が会社の採用試験を受けるのが慣例。転勤がないことで地域での集票力が高まり、社内での発言力も増すという構図だ。
 地区幹部は、旧特定局の局長や局員の人事についても、事実上の権限を持つとされる。局長会の「地区会長」は社内の「統括局長」、「副会長」は「副統括局長」となるなど、局長会が決めた序列がそのまま社内の役職に反映されている。
 こうした序列の一致について、衣川社長は会見で「たまたまだ。局長会の決定を追認しているわけではない」と繰り返した。
 九州のある局長は「これが『たまたま』なら、全国約2万人の局長の役職が毎年、天文学的な確率で局長会の序列と一致していることになる。社長がこんな苦しい説明をしなければならない状況で、本質的な再発防止ができるはずがない」と話した。 (宮崎拓朗、山口新太郎)