>>112
『ゴールデン・マン』まえがきより

わたしがSFに興味を持ったのは、ハインラインとA・E・ヴァン・ヴォクトの作品をつうじてだった。
ハインラインとは政治的イデオロギーがまったくちがうが、私は彼を精神的父親と思っている。
数年前にわたしが病気だったとき、ハインラインは自分にできることがあったらなんでもいってくれと、
助力を申し出てくれた。それまで一面識もない男にだ。
彼は何度も電話をかけてきてわたしを励まし、体のぐあいを気づかってくれた。
もったいなくも、電動タイプライターを買ってやろう、とまでいってくれた――彼こそはこの世界の数少ない紳士だ。
彼が作品の中で提出するどんな意見にもわたしはくみしないが、それとこれとは話がちがう。
以前わたしが国税庁から多額の課税をされて払えないでいるとき、ハインラインはその金を貸してくれた。
わたしはハインラインとその奥さんをとても大切に思っている。感謝のしるしに、一冊の本を夫妻に捧げたこともある。
ロバート・ハインラインは、りっぱな風采の人物で、実に印象的な風貌と、実に軍隊的な姿勢の持ち主だ。
髪の刈り方にいたるまで、軍隊の経歴がしみこんでいることは、一目でわかる。
彼はわたしがはみだし者のヒッピーであることを承知の上で、なおかつ、わたしと妻が困っているときに手をさしのべてくれた。
これこそ最高の人間性だ。わたしが愛するのはこういう人間、こういう行為なんだ。