欠陥翻訳は問題外だとしても、やはり、翻訳は複数の中から好きなものを選べるようにしても
らった方がありがたいかな。

ルイスのナルニア国なども、2014年に著作権が切れたことで、光文社文庫から新しい翻訳が
出されるようになり歓迎されている。 (現在シリーズ刊行中)
従来の瀬田貞二訳が児童向けの 「です・ます」 調であるのに対し、新しい土屋京子訳は大人
にも楽しめるよう、 「だ・である」 調の文体が使われているのが特徴。
いま読むとすれば、自分は新訳の方になるだろうと思う。

<瀬田訳>
 この物語は、ずっとむかし、みなさんのおじいさんがまだ子どもだったころのお話です。そして
ここには、そもそもわたしたちのこの世界とナルニアの国とのゆききがどんなふうにして始まっ
たかということが書いてありますから、たいへん大事なお話でもあります。
 そのころは、名探偵のシャーロック・ホームズがまだ生きていて、ベーカー街に住んでおりまし
たし、バスタブル家の子どもたちが、ルウィシャム通りで、宝さがしをしていた時分です。

<土屋訳>
 これは、はるか昔、読者諸君のおじいさんが少年だった時代に起こった、とても重要な物語で
ある――というのは、わたしたちの世界とナルニア国との行き来がどのようにして始まったかを
伝える物語だからだ。
 この時代には、ベーカー街にはまだ名探偵シャーロック・ホームズ氏が住んでいたし、バスタ
ブル家の子どもたちはルーイシャム通りで宝探しをしていた。