思い出すのは、まだ学生の頃、深夜ふらっと近所のコンビニへ行った時のこと。
店内に二人ほど客がいたのだが、俺は普段そのコンビニでバイトをしていて、
バイト仲間や見知った人かもしれんと、コンタクトを外していて眼鏡もかけおらず
ろくに見えてない目を細め凝らして客を見たのがどうやらいけなかった。
「お前ガン付けやがったなあ゙あ゙ん俺ぁ東京もんだぞ」と突っかかってきたのだ。
一応誤解だと説明し不快だったのならすまなかったと伝えたが、相手の男は
「あ゙あ゙ん俺ぁ東京もんだぞあ゙あ゙ん」と何度も何度も繰り返して威嚇してくる。
男の連れらしい女の子は彼の後ろでなんだか申し訳なさげに縮こまっている。
東京もんだからどうだというのか俺にはさっぱり理解不能だったが、とりあえず
彼の拠り所がそこにしかいないのだけはよぉく伝わったので、そこには触れず、
適当にいなしながら、心底アホらしい気分になっていた俺の頭に浮かんでいたのは
動物園のサル。昔檻の中のサルを見つめてたら、こんな風にいきなりぎゃーぎゃー
威嚇してきやがったサルいたなあ。サルと目をあわせちゃいかんよなあ。あんときゃ
ずいぶんからかってやったものだが、今、あばばばぁってしちゃうと危険だなぁ。
そうこうするうちに、女の子にもう行こうと急かされて彼は車で去って行った。

今でも、ある種の状況で「東京もん」だの「なんとか大卒」だの「名家の家柄」だのと
言いつのって人を威嚇するやつ見かけると、あのチンピラとサルを思い出すのだ。