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 ボンクリ・フェスの1ヶ月後、10月31日には、もう一つの藤倉企画が控えている。彼の初めてのオペラ『ソラリス』の日本初演だ。

 このオペラは、タルコフスキーらによって映画化されたものではなく、レムの原作をもとに脚本が作られている。
2015年、パリにおける世界初演では、ダンサーが歌手のまわりを動き回る、斬新で抽象的な勅使川原三郎の演出が、聴衆に強烈なインパクトを与えた。
今年5月には、宇宙船の室内さながらのリアリティ溢れる舞台装置を駆使した(ダンサーなしの)演出によって、アウグスブルクで再演された(演出:ディルク・シュメーディング)。
そして、今回の日本初演は、演奏会形式となる。

 本オペラのストーリーのほとんどは、惑星ソラリスの周囲を回る宇宙ステーションの船内だけで展開する。
ソラリスの海の不可思議な作用によって、主人公ケルヴィンの自殺した恋人が船内に現れるという、SF小説というよりはほとんど心理劇的な内容だ。
こうしたストーリーの場合、視覚的な演出を削ぎ落とし、聞き手のイマジネーションを喚起する今回の演奏会形式の方が、むしろ作品の本質に近づけるのではないだろうか。


ソラリス?生きることは眠ること。