「渇きの海」 のレビューを眺めていると、サバイバル小説として読んでいる人たちが多い
月面という科学考証にはこだわらず、砂の海という悪条件からどうやって脱出するのか?
という、ある意味、パズル的な問題を解くことに楽しみを見いだしている人たちが多い

SFの思弁小説としての大きなメリットは、人類にとって未知の状況を設定し、そこで人々は
どう行動するのかを、小説を利用し実験的にシミュレーションしてみることが可能な点にある

スタニスワフ・レム 「砂漠の惑星」 なども、捜索隊が砂の惑星で遭難した宇宙船をひたすら
調査するという色気なしの話で、遭難した原因が分かっても人類はそれを克服することまで
はできず、さまざまな謎を残したまま物語は終わりを迎える

哲学書が、安易な結論を提示するのではなく、あくまでも考える過程を重視するのと同様に、
レムやクラークの作品は疑問を残したまま終わるスッキリしないものも多い

SFを娯楽小説として読んでいる人の場合は、クラークのある種の作品やレムのような作風、
ハインラインの 「異星の客」 など、楽しめないものがけっこう混じっているのは仕方ないかも