戦争といえば、病院の中は戦争同然だった。
ワクチンの注射、解熱剤、強心剤、抗生物質の注射――病院はどの部屋も高熱重態の患者で満員であり、耳鼻科、外科、眼科、産婦人科の病棟までつかわれ、廊下の長椅子までベッドにつかわれていた。
医師たちは、ほとんどが不眠不休であり、中には覚醒剤やビタミン剤、栄養剤などをうちながら何十時間もぶっとおしで、患者を見ている医師もいた。
――外科の方は、激増しはじめた交通事故のけが人がひっきりなしにはこびこまれてくるので、外科医たちは手がはなせず、かわって眼科や耳鼻科、皮膚科などの医師たちもチベットかぜ♀ウ者の応対に動員されていた。
しかも――すでにK―病院勤務の医師たちの間で、死亡したものが三名いた。
看護婦の中にも、ワクチン接種をやったにもかかわらず、重篤患者が出はじめて、平常のほぼ三倍強の業務量を強制されているK―病院では、篤志看護人や、医学部の学生まで手つだいに来てもらっていた。