ラヴクラフトはハミルトンの人気に嫉妬してそんな発言をしたんじゃないかな。
ハミルトンには「時果つるところ」といったシリアスな作品もあるし、「フェッセンデンの宇宙」など短編の名手でもある。

たとえば、以下に短編の冒頭をいくつか引用してみるけど、どれも魅力に富んだ書き出しとなっている。

いまさらいってもしかたないが、フェッセンデンの忌まわしい実験など目にしなければよかったのだ!
呪われた好奇心に誘われて、あの夜彼の実験室を訪ね、あんなものを見なければ、心の平和を永遠に乱され、死ぬまで陰気な変わり者として過ごすことなどなかったはずなのだ。

強烈な黄金の魔力に誘われて、ブレントはその伝説の卓状台地へと赴いた。トルキスタンは最奥の地にあるその高地は、人呼んで風の高原。
根強い噂によれば、世に比類なき豊かな金脈が、その人跡未踏も同然の高原に眠っているという。

退院するとき制服を着たくはなかったが、ほかに服はなかったし、出ていけるのがうれしくて、あれこれいう気も起きなかった。
しかし、ロサンジェルス行きの地方便に乗ったとたん、制服を着てきたことを後悔した。

意識をとりもどしてしばらくのあいだ、ジョン・ウッドフォードは、自分の横たわっているのが棺のなかだとは気づかなかった。
ぼんやりとわかったのは、あたりが漆黒の闇で、吸いこむ空気がむっと淀んでいるということだけ。
ひどく体が弱っている感じで、ここがどこで、どうしてここへ来たのかには、かすかな好奇心しか湧かなかった。

ハリマン医師は産婦人科病棟の廊下で足を止め、
「二十七号室の患者の容態は?」とたずねた。
ぱりっと糊のきいた制服をまとった、ぽっちゃりした看護婦長が、目に哀れみの色をたたえて答えた。

小馬にまたがり、尾根に立ったカール・カンは、黄土色の砂が延々と連なる砂漠の一点を指さした。
砂漠は深紅の落日が放つギラギラした光を浴びていた。
「あそこだ、おまえたち!」と彼は満足げにいいはなった。