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黎明篇より引用。

『「解放地区の拡大にともない、この数値は順次、大きなものとなるであろう」――ということは、補給の負担が増大するいっぽうということではないか。勢力範囲の拡大を無邪気に喜んでいる場合ではあるまい。しかも、ここには恐しい暗示がある……。』

『「敵の作戦が、わが軍に補給上の過大な負担をかけることにある、ということです!」
 強い口調であった。本来なら、このていどのこともわからないのか、とどなりつけてやりたいところだ。
「つまり敵は輸送船団を攻撃し、わが軍の補給線を絶とうと試みるだろう――それが後方主任参謀のご意見なのですな」
 フォーク准将が言った。口を差しはさまれたのは不愉快だが、キャゼルヌはうなずいた。
「しかし最前線までの宙域は、わが軍の占領下にあります。そうご心配にはおよばないでしょう。ああ、いや、もちろん念のために護衛はつけます」
「なるほど、念のためにね」
 思いきり皮肉にキャゼルヌは言った。フォークがどう思おうと、かまうものか。』

これらのくだりの後に、『不足である、せめてせめて一〇〇隻』」との主張が出る。
スコット提督の率いる同盟軍の輸送艦隊は、一〇万トン級輸送艦一〇〇隻に対して護衛艦二六隻などと言う手薄さへのツッコミである。
多い方がより安心に決まっているし、そもそも過大な負担が掛かっていてそれがさらに増大するでおろう状況が論外。

キャゼルヌの中での大前提は、補給線の防衛と補給船団の護衛の必要性であり、そして同盟軍の補給線途絶を目論む帝国軍の戦略への危惧であることは、疑いをえない。