さて、ここで話を戻しますと。「他殺」ではないか、という所からになります。
「他殺」ということは、当然「犯人」がいることになります。だが、それは誰か?
その人物は、なつみの死の現場に存在することができたこと、つまり「犯行可能性」
がなければなりません。さらに、殺害に至るほどの強い「動機」が必要です。
そして、推理小説的には、「物語の当初から登場している」のが望ましく思われます。
最後の条件は私の願望ではありますが、検証の手順としては効率的と考えます。
とりあえず、登場順に「犯行可能性」「動機」について見ていきたいと思います。

まず登場するのは「モナー」。なつみを地獄に連れていく張本人ですし、途中で無断下車
したなつみに対する怒り方も尋常ではありません。なつみに対して何らかの執着を持って
いる可能性は否定できません。しかし、そうはいっても彼は基本的には冥界の住人であり、
なつみの死の現場があくまで現世の駅のホームであることを考えると、その場に居合わせた、
すなわち「犯行可能性」があったとは、考え難いです。現時点では彼を犯人とする論拠は
乏しいように感じます。

次に登場するのは「なつみ」。他殺説をとる以上、当然除外です。

さて、問題が次に登場する人物…そう、なつみの回想とともにフラッシュバックされる、
あの夕暮れの場面に浮かぶ影の人物…仮に「影男」と呼んでおきましょう。
彼はどうでしょうか?
彼の言動その他は不詳ですが、なつみの様子からして、何らかの言い争いがあったもの
と思われます。先ほど私が主張した「なつみは妊娠・出産希望」説からすれば、通常は
妊娠には男性を必要とすることから、彼がその相手方、しかもなつみの出産に反対して
口論となったことが想像されます。そしてあくまでなつみの出産を阻止しようと彼が
試みた場合、それはなつみ殺害の「動機」となることは十分に考えられます。
そして、これが一番重要かと思われますが、この作品においては彼が、後に登場する
2chキャラその他を含めても、なつみ以外では現世に登場する唯一の人物、すなわち、
「犯行可能性」のある唯一の人物なのです。

以上により、私は、なつみは他殺であり、犯人はこの「影男」であったと考えます。