そこから連想。似たモチーフでも、作者の個性による明からな違いが。

・みちしるべ
ttp://www5f.biglobe.ne.jp/~card-card-book/bundou.htm

Flash動画文芸祭に投下されたFlash。

練られた反復を用い、キャラクターの心の鼓動さえ伝わる、リリカルさ(詩っぽさ)と分かりやすさを兼ね備えた文章。
対比、構成、展開の妙。
淡く優しい色調で統一された挿絵。

その中でわたしが特に注目したのは文の魅せ方。
「私にはこの世界しかないんだ」の手書きによる切に迫った感じ。

「かくれんぼしましょう」からの一連の文章、映像、音楽の魅せ方が巧み。
一文字ずつ綴っていく文章。まばたきのような転換。音楽の出し方。確かな開放感。文字の大きさの変化が「!」よりも的確に感情を示す。
特に「気がついたら私の足元にまで道が伸びている」の魅せ方は圧巻。

道の果てにあるものは。ここではネタバレしてしまうのが余りに勿体ないので伏せます。己が目でご確認を。

物語の締め方も上手い。
「音楽の途中で終わってしまう」や「楽曲の尺に合わせたことで、同期は出来たものの選曲や語り口に強引さや無理が出てしまった」という悩みは多いと思う。
このFlashは、その打開策の一つを鮮やかに提示しているんじゃないだろうか。物語が終わっても音楽を流し続ける。
慌ただしい時はスキップできるし、暇があるときは余韻に浸る贅沢な時間を楽しめる。

ただ、難点を挙げるとするなら。
自然の情景を描くのが本当にうまく、武器になっていて、それだけでも感動できるのだけど。
人物やキャラクターや街並みなど、そうした生命との出会いをもっともっと配して欲しかったあ。

と、何年も前に、文章系の一つの完成系を提示したような本作。これに震わされるのは想い出補正じゃない。