0001名無しのオプ2015/12/31(木) 15:01:02.27ID:jdtzQL9w
『象牙の塔の殺人』アイザック・アシモフ
SF作家として有名なアシモフのミステリー作品。
大学の化学実験室で起きた殺人事件を被害者である生徒の指導教官が探偵役となり事件を追うというのが簡単なあらすじ。
SF作家だし化学実験室が現場だという事でサイエンス的なトリックを解き明かす作品なのかと思えばそんな事は無く
人間ドラマとフーダニットがメインの本格ミステリーである。
仕事と家族それに加えて事件の事まで悩みを抱えた主人公ブレイドの物語が地味ではあるが面白い。
それでいてちゃんとラストには意外性のある真相を用意してくれるんだからミステリーとして必要なもんをちゃんと揃えているんだよな。
あまり有名では無いし地味ではあるが良い作品だった、掘り出し物を見つけた気分。
『ナイン・テイラーズ』ドロシー・L・セイヤーズ
ピーター・ウィムジイ卿シリーズ9作目。村に不釣り合いなほど大きな教会の立つ小村を舞台とした作品。
鳴鐘術の説明(解説を読んでも訳が分からないよ)と村民による田舎訛りのせいで読みにくいったらありゃしない。
セイヤーズ作品の中でも屈指の読みづらさだと思う。
ただその読みづらさを耐えるに値する作品である事は確かで
村に現れた謎の男、消えた宝石、顔の無い死体、暗号などミステリーとして興味を惹かれる要素満載。
そして何より意外すぎる犯人に驚かされる。
ただこの真相は人を選びそうな気がする。
自分としてはセイヤーズで一番の名作という声が大きいのも頷ける作品だった。
0099名無しのオプ2020/02/26(水) 14:02:47.37ID:1bHeE/5s
55 デラーギ
あらすじと最初だけ面白そうで、後はつまらん
魅力的な登場人物皆無
掴みだけ一流 後三流
0100名無しのオプ2020/07/15(水) 20:19:37.45ID:FDaacKMI
『オシリスの眼』R・オースティン・フリーマン
ソーンダイク博士シリーズ長編二作目。
タイトルから分かる通りエジプト考古学に関わる事件を書いている。
じっくりと物語が展開していくのが実に古き良き英国ミステリーといった感じで心地良い。
まだ馬車で移動する時代の英国の雰囲気と、これまたベッタベタな語り役と事件で知り合った女性のロマンスも堪能できる作品だ。
しかしミステリーとしても古典的な物が用意されているのだろうと予想していたら、驚きの真相が待っていた。
ソーンダイク博士の推理も1911年の作品と思えんぐらいロジカルだ。(ちょっと怪しいところがあるのはご愛敬)
1911年に良くこれだけのミステリーを書けたなと感心したが、ただトリックはこの時代だから許されるものだろうな…。
ヴァン・ダインや江戸川乱歩がベストに選ぶだけの事はある作品であったと思う。
「紙片は告発する」D・M・ディヴァイン
スコットランドのとある町の町政庁舎を舞台とした作品。
町政庁舎で一人の人間の秘密を知った女性職員が殺害されてしまう。
誰が秘密を抱えていたのか?
ディヴァインは何作か読んでるが安定していて楽しめるなぁ。
ドライのように見えて人間味ある人物描写がいつも以上に冴えていて
主人公ジェニファーの探偵役としてだけで無く町政庁舎の職員としての奮闘も見どころの一つで人間ドラマが面白い作品だった。
ミステリーとしては犯人を導く手がかりなどは良くできていたと思うが、いつもと比べると犯人を当てやすかったかな。
0102名無しのオプ2021/01/10(日) 22:34:35.20ID:hFa1dT6M
「ホワイトコテージの殺人」マージェリー・アリンガム
アガサ・クリスティー、ドロシーLセイヤーズと並ぶ英国ミステリーの女王のデビュー作品
W・T・チェロナー警部とジェリーの親子コンビによる捜査がなかなか面白い
クイーン親子に代表される親子もののように息子が主ではなく父親の方が主で息子がワトソン役となっているのが新鮮だ
この親子のコンビである事以外は古き良き英国ミステリーといった感じの内容
その空気感は心地良いが、スタイル的にもミステリーとしてオーソドックスな結末になるだろうなぁ…と予想していたら
完全に油断してしまったせいでラストで衝撃を受けてしまった
本格ミステリーとして見ると結構怪しいところとかあるんだけど、それでも1928年に出版された作品でこれは凄いやと驚嘆してしまった
2018年創元文庫で発売されるまで日本だと埋もれてた状態になっていたのが不思議なぐらいの作品だと思う
『三つの栓』ロナルド・A・ノックス
ノックスの十戒と『陸橋殺人事件』で有名なノックスによる
探偵マイルズ・ブリードンシリーズ1作目の作品。
多額の保険金を自身にかけた資産家がとある田舎町の宿で
ガスにより死亡してしまう。はたして殺人か自殺か?
探偵マイルズとその相棒である妻アンジェラとの会話が楽しく、作品全体もユーモアな空気があり
サスペンスやスリルとは無縁ののんびりした牧歌的な雰囲気とユーモアを楽しむ作品だ。
ミステリーとしてはこれまた『陸橋殺人事件』以上に人を食ったような真相で
確かに驚きではあるんだけど、良くも悪くもノックスらしい結末。
ロナルド・A・ノックスは他の作品で既に分かっていたんだけどほんと玄人好みの作家だわ…。
0104名無しのオプ2021/03/31(水) 21:35:31.78ID:ArdqAFt7
「世界短編傑作集1」江戸川乱歩編 読了
江戸川乱歩が海外の短編ベストを参考に選んだ海外短編ミステリー傑作選
第1巻に収録されている作品は以下の7作
「人を呪わば」ウィルキー・コリンズ、「安全マッチ」アントン・チエホフ、「レントン館盗難事件」アーサー・モリスン、「医師とその妻と時計」アンナ・カサリン・グリーン、「ダブリン事件」バロネス・オルツィ、「十三号独房の問題」ジャック・フットレル、「放心家組合」ロバート・バー
バラエティーに富んでいて面白い短編集だったが
個人的にこの中でベストを選ぶなら「人を呪わば」ウィルキー・コリンズ
刑事達の報告書のやりとりだけで構成されていてコリンズの代表作「月長石」を彷彿とさせる内容だ
推理をするのに全ての情報を提示できてるとは言い難いが複数の報告書から事件解決へと導いていく流れが鮮やかだ
印象には残ったが困惑してしまった作品が「放心家組合」ロバート・バー
読み終わった後にえぇ…っとなってしまった
乱歩先生の言う奇妙な味ってそういう事なの?
0105名無しのオプ2021/05/03(月) 01:24:45.11ID:teENBu55
『ニュー・イン・三十一番の謎』オースティン・フリーマン
ソーンダイク博士長編第三作目の作品。
ワトソン役であるジャーヴィスが正式にソーンダイク博士のジュニア・パートナーとなる作品であり
三作目ではあるが既にジュニア・パートナーとなっていた二作目『オシリスの眼』より以前の作品である。
正直、事件の真相は予想できる点が多く(実際ソーンダイク博士も気づいている素振りを見せる)
真相に気づかないジャーヴィスにヤキモキしてしまうところもある。
だが直ぐには真相にまで飛びつかず、その真実を確固たるものにするための証拠を着実に集めていくのが
オースティン・フリーマンの作風でありソーンダイク博士という探偵なのだろう。
この作品は二人の冒険譚と真相にどう辿り着くかを楽しむ作品であると思う。
前述したとおり真相は予想通りな点が多いが
情報を読者に提示するフェアプレイさとロジックは1912年に書かれたものとしては群を抜いていると思う(ちょっと怪しいところが無いでもないが)
『顔のない男 ピーター卿の事件簿U』 ドロシー・L・セイヤーズ
日本独自に編纂したピーター・ウィムジイ卿の短編集第二弾。
ピーター・ウィムジイ卿の7つの短編以外に、セイヤーズが実在の犯罪事件を推理する「ジュリア・ウォレス殺し」、セイヤーズが古今の探偵小説を論じた「探偵小説論」が収録されている。
ピーター・ウィムジイ卿の短編では表題作「顔のない男」が白眉。電車内で語られる事件の論議、被害者の顔が潰された動機、意外な結末、短編でありながら充実した作品だった。
他の短編は結末が読みやすく特段優れた作品があるわけではないのだがピーター・ウィムジイ卿の愉快な貴族探偵っぷりが堪能できて楽しめた。
「ジュリア・ウォレス殺し」は実際にあった不可思議な事件をセイヤーズが分かりやすく解説してくれて、「探偵小説論」も読み応えのある評論であり共に大変勉強になる読み物だった。
短編集7作+評論2作という変則的な短編集だったがなかなか充実した短編集であったように思う。
0107名無しのオプ2021/08/08(日) 04:15:20.25ID:+1mFAOV6
「白魔」ロジャー・スカーレット
ロジャー・スカーレットといえば代表作である「エンジェル家の殺人」を江戸川乱歩が高く評価し翻案作品を書いた事で知られているが
今作品である「白魔」の方が怪人めいた犯人といい、おどろおどろしい雰囲気といい、犯人の異常性といい乱歩好みの作品のように感じられたな
もっとも解説によると乱歩はこの作品をお気に召さなかったようだが
ロジャー・スカーレットの他の作品「猫の手」「エンジェル家の殺人」と比べるとミステリーとしては荒削りなところがあり完成度では劣るが
今作品の方がサスペンス性が強くスピード感があり単純にエンタメ作品として面白いように思う
もっと終盤まで引っ張っても良いような謎を中盤でネタバラシする出し惜しみの無さと
終盤の目まぐるしく二転三転するストーリー展開が印象に残った
『自殺の殺人』エリザベス・フェラーズ
トビー&ジョージシリーズ3作目の作品。
ある日、トビーとジョージは自殺を図った男を助けるが、その男が翌日殺されてしまう。
自殺に偽装した他殺なのか、それとも他殺に偽装した自殺なのか…。捜査は難航する。
あらすじからも分かる通り、自殺か他殺かで捜査が右往左往し読者も混乱の渦中に放り込まれる事になる。
ややこしい状況になりつつも最後は納得できてかつ意外性のある結末に帰するのだから流石のフェラーズといったところか。
今作はトビー&ジョージものの他の作品と違いトビーの視点では無く、被害者の娘ジョアンナを視点に話を進行させていく。
そのため他の作品とはまた違った空気があり、ちょっとクリスティっぽい雰囲気だなと思った。
作中で「本棚にアガサ・クリスティの最新作を直し…」といった感じの文章もあるので、作者自身も意識してたのではないだろうかと思ったり。
創元で復刊されてた「ウサギ料理は殺しの味」読み終わった
ワロタ
創元で復刊されてた「マギル卿最後の旅」読み終わった
元祖十津川警部やんw
昔教養文庫で読んでたけどすっかり忘れてた「ある詩人への挽歌」読了
0116名無しのオプ2021/12/22(水) 01:20:09.28ID:7xaffmKc
『ハイヒールの死』 クリスチアナ・ブランド
クリスチアナ・ブランドのデビュー作品
クリスチアナ・ブランドは何作か読んでるがやっぱ文章に癖があるように思う
その癖のある文章で書かれる登場人物も一癖も二癖もある人物ばかりで、その人物達が織り成すドラマが面白い
今作は婦人服店が舞台でありそのためか容疑者の多くは女性ばかりで華やかだ
そしてその女の園で捜査をする探偵役が女性に弱いチャールズワース警部で彼の言動も見所の一つ
以前読んだブランド作品『ジェゼベルの死』(こちらはコックリル警部もの)で脇役としてのチャールズワース警部を知っていたのだが
こんな面白い兄ちゃんだとは思わなかったぞw
ミステリーとしては後の名作と比べると正直粗いように思う
しかし、それでも誰が犯人であってもおかしくない状況を作り犯人当てで二転三転四転させ
最後に意外な犯人に行きつくというブランド定番の流れはデビュー作の時点でできている
完成度では後の作品と比べると落ちるがなかなかの佳作であった
0117名無しのオプ2021/12/25(土) 15:48:14.04ID:SZnjM7D1
パーカー「レイチェル・ウォレスを探せ」
「儀式」を読了。後者はまだるっころ
しい感じがした。
今は「初秋」を読書中
Magpie Murders
これどうやって翻訳したんだ?
ってのが気になる箇所があるから
立ち読みしてこよ
と思ったら出てたな
>>108
>「カササギ殺人事件」
>馬鹿まんこ!にワロタ
もう1箇所あるけど しかし「馬鹿まんこ」って酷いわ
直訳もいいとこでこんなもんは翻訳といえない
どうせアナグラムにならないんだから
例えば「マーン」とか「女さん」あたりにすればいいのに
この翻訳者センスねえな
0121名無しのオプ2022/01/06(木) 15:17:54.18ID:5QmFkTyr
>>120
「馬鹿まんこ」=「カント!」なんじゃないの?
ネットスラングを他で使うのは頂けないぞ。「まーん」「マーン」なんてオトコ女って感じだよ >>121
そうなの?
まあ一応ネタバレなのでこれ以上はやめとく 0123名無しのオプ2022/02/03(木) 00:48:07.75ID:scplymlL
『メグレと口の固い証人たち』ジョルジュ・シムノン
ひっさびさにメグレ警視ものを読んだが
ダウナーで淡々とした雰囲気は変わらずで、メグレ警視ものはその空気感を楽しむ小説なんだろうなぁって思う。
犯人はあまり意外性は無い、しかしそれ以外の真相は割と意外性あり。
後味の悪さもこのシリーズらしく何とも言えない読後感を残してくれる。
「白墨人形」
ラストの衝撃!ってのが何が衝撃なのかわかりません
彼が親父と同じ病気ってこと?
0125名無しのオプ2022/04/13(水) 22:47:30.28ID:/+S8iXXE
『ヴァルモンの功績』ロバート・バー
江戸川乱歩選の世界短編傑作集に収録されたり世評の高い「放心家組合」で有名なユージーヌ・ヴァルモンものの短編集。
+シャーロック・ホームズのパロディ作品が二作収録されている。
傲慢ちきで愉快な探偵ヴァルモンのキャラクターは面白く、作風自体も全体的にユーモアたっぷりの内容で楽しい短編集だった。
世界短編傑作集で「放心家組合」を読んだ時はその奇妙な味というものにイマイチピンと来なかったのだが
この短編集の中でヴァルモンものの作風を掴むことでようやく良さというものが分かったな。
短編集の中で一番良いと思えたものは「レディ・アリシアのエメラルド」。次点で「チゼルリッグ卿の遺産」かな。
ボーナストラック的な二編「シャーロー・コームズの冒険」「第二の分け前」はシャーロック・ホームズのパロディ作品で
かつ初期のパロディ作品ということで歴史的価値の高い作品らしい。
しかし、内容は…よくもまぁ、コナン・ドイルが怒らなかったもんだなってなるような内容。
作者ロバート・バーはドイルと友人だったそうだが、友人だからこそ笑って許してくれたってことなんだろうかねぇ。
0126名無しのオプ2022/05/07(土) 01:39:50.40ID:AKJsNqju
『極悪人の肖像』イーデン・フィルポッツ
広義の意味では倒叙形式の作品なのだが、狭義の意味では倒叙ではない(何故そうなのかを語ろうとすれば
ネタバレになるので語れない)イギリスの名門貴族に突然変異的に生まれたある犯罪者を主人公とした物語である。
主人公アーウィンの犯行は徹底的に自分が怪しまれないことを重視した方法で、その犯行はなかなか興味深いものではあるが、割と杜撰なところもあり、
そこまで特記すべきところは無いだろう。
この作品の特徴は何といってもアーウィンの人物像にあり、犯人の造形が印象的なフィルポッツ作品の中でも際立って強く印象に残る犯人であった。
そして、アーウィンの物語の結末も強く印象に残るものであり何とも言えない余韻を残してくれる。
この作品が第二次世界大戦直前の1938年に発表されたことを考えるとフィルポッツも何か思うところがあったのかもしれないと考えてしまうなぁ。
0127名無しのオプ2022/05/30(月) 00:49:55.90ID:SHXe/ENU
『南の子供たち』SJローザン
かつてシリーズ読んだけど記憶が薄れてる方、リディアの母ちゃんキャラ覚えてたら大丈夫です。米国南部での人種差別問題はこの小説だけでは語れませんが、リディアとビルの物語として捉えると重要なエピソードだったと思います。シリーズ未読の方にもお勧めです!
『キャッツ・アイ』 R・オースティン・フリーマン
ソーンダイク博士の6作目の長編。
キャッツ・アイ(猫目石)を巡る殺人事件を書いた作品で、暗号あり遺産に関わる伝奇もの要素ありロマンスありヒロインを守るための犯人との戦いありの色んな要素盛り沢山のエンタメミステリーだ。
これまでのソーンダイク博士の長編も冒険もの的な要素やロマンスはあったが、ここまで色んな要素が詰められてエンタメ作品になってるのはこのシリーズでは稀だと思う。
小説に詰め込まれた要素だけ見るとまるでアルセーヌ・ルパンや江戸川乱歩の作品のようだが、それをフリーマンが生真面目に書いて質実剛健なソーンダイク博士が謎を解くとなるとこうなるんだなと新鮮さがある。
裏表紙のあらすじには黄金時代ミステリと書かれているが、個人的にこの作品はホームズ時代と黄金時代の間ぐらいの空気感があるように思う。
古風な作品の空気感とストーリー、その中で書かれるホームズ時代より一歩進んだ感じのあるソーンダイク博士の推理がそう思わされるのであろう。
0130名無しのオプ2022/08/15(月) 01:38:15.10ID:+rJHmNcc
『見えない凶器』ジョン・ロード
正直タイトルの見えない凶器の謎の真相はヒント与えすぎな事もあってか難易度が低い。
しかし、それ以外の謎と真相で唸らせてくれる作品で意外な動機と意外な真相で驚かせてくれる。
本格ミステリーとしてはとても良く出来た作品だと思うのだが、ロマンスも無いしサスペンスでハラハラさせてくれる事も無いし
人間ドラマがあるわけでも無いし特殊な舞台設定があるわけでも無いし登場人物は探偵も容疑者もそこまで面白い人物もいないしで
ほんとミステリー以外の要素が薄いのだ。
まるで素材そのままの素の味で出された料理って感じで、確かにこれはこれで美味しいがもう少し味付けや他のメニューも欲しいとなる料理みたいな作品だった。
ジョン・ロード作品は解説によると「退屈」と評されることもあるようだが、退屈とまではいかないがもう少しエンタメして楽しませてくれても良かったんじゃない?とは思ったかなぁ。
『運命の証人』D・M・ディヴァイン
二件の殺人事件の容疑者として逮捕され裁判にかけられることとなった男の物語。
冒頭は裁判のシーンから始まるが、物語は過去に遡り何故主人公プレスコットが逮捕されるに至ったか、
誰がどのように殺されたかが語れることとなる。
殺人と逮捕に至るまでの人間模様とドラマは大変面白く、相変わらずディヴァインはこういう話を書かせたら上手いなぁと感心。
裁判からの逆転そして真犯人逮捕までの流れも非常にスリリングで最後まで飽きずに読める。
サスペンスとしての面白さは今まで読んだディヴァイン作品の中では一番じゃないかなと思う。
ただしミステリーとしては結構粗いところがあり、勢いで突っ走った感がある。
後、主人公プレスコットが逮捕に至る状況まで陥ったのは自業自得な面があり、イマイチ同情できないところがあるのは気になるところか。
殺人事件に遭遇して動揺してしまいドツボに入ってしまうのは犯人の奸計もあり仕方のないところもあるが、
女関係ではだらし無くてついつい流されてしまうのはほんとコイツ…ってなってしまう。
「紺碧海岸のメグレ」ジョルジュ・シムノン
メグレものでは割と初期の作品。
簡単なあらすじは、風光明媚な紺碧海岸(コート・ダジュール)で殺害された男の事件をメグレが捜査するというもの。
南仏の観光地が舞台ということで華やかな場所での物語かと思えば、華やかな街の裏のうらぶれた酒場の物語である。
自由を求めた男、酒場で出会った女たちとの怠惰な生活、そしてそこに隠された悲劇…まるでハードボイルドものみたいな設定だなと思ってしまった。
真相が明かされた後の結末もまたハードボイルド的。そこまでメグレものをたくさん読んでるわけではないが今作はもしかしたら異色作なのではなかろうか。
0137名無しのオプ2023/03/29(水) 23:48:32.12ID:FZxZ07iP
『薔薇荘にて』A・E・W・メイスン
『矢の家』で有名なA・E・W・メイスンのミステリーデビュー作品であり、アノーもの初作品。
1910年の作品でありホームズものの短編が主流で長編ミステリーが主流となる黄金期が始まる前の時代の小説なのだから
かなり古風な作品である。
だからと言って読みづらいとか、つまらないなんてこともなく、古き良きミステリー作品として楽しめる。屋敷で金持ちの老婦人が殺され、それと同時に一見犯人としか思えない美少女が消えてしまうというプロットも王道だし、
降霊会が作品の重要な要素になってるのも、いかにもその時代の作品らしいと思える。
ミステリ―のプロットはその時代の王道な作りだが、真相はその時代にしてはなかなかの意外性なのではなかろうか。
サスペンス性とか雰囲気に見所はあっても真相がバレバレだった『矢の家』よりミステリーとしては上のクオリティのように思える。
しかし、作中の三分の二のページ数で犯人が発覚して、その後はずっと事件の再現ドラマに紙面が費やされるのはやっぱり古いなぁ…と思ってしまう。
だが、ヒロインの視点で描かれる事件のドラマは緊張感があって楽しめるし、
アノーの捜査によって得た情報の意味が次々と分っていくのはパズルのピースがピタリとハマるような感覚がありこれはこれで読み応えがあった。
『ウッドストック行最終バス』コリン・デクスター
著者のデビュー作にてモース警部ものの1作目。
強姦殺人という胸糞悪い事件がメインの話でもあるのに関わらず、暗い感じはあまり無く軽妙でユーモアのある作品になっている。
迷走していくモースの捜査は笑えて楽しいが、これちゃんと解決できるのか?と心配にもなってしまうほどだ。
捜査の迷走と人間関係のカオスっぷりに読んでる方も頭がこんがらがってくるが、最後には複雑に絡んだ糸をほぐして一本に、しかも意外性抜群の真相に辿り着くのだから大したものである。
ただ、真相を隠すために人間関係が複雑化しているのだが、その複雑化の一番の原因が登場人物がどいつもこいつ性に奔放すぎるからっていうのは如何なものかと思う(笑)
『灰色の部屋』 イーデン・フィルポッツ
チャドランズ屋敷の『灰色の部屋』と呼ばれる閉ざされた部屋で過去、人が不可解な死を遂げていた。その部屋の呪いに探偵や宗教家達が挑戦する。
…というの簡単なあらすじで、本当に超常現象が起きているのか?科学で説明できる現象が起きているのか?と人々が議論を交わしながら話は進行していくので
その議論のところは宗教的な話が長々と語られたりするので退屈する箇所もある。
だが、次々と人が死んでいき、全く謎が解明しない状態で話が進み、かつ途中で超驚きの展開になるので早く続きが読みたいと思わせる面白さがある。
真相もフィルポッツ作品の中では一番かもってほどの意外な真相…しかし、かなりのアンフェアなことをしでかしてくれる。
ノックスの十戒も発表されてない時代とはいえ、これはどうなんだろうな…、しかし最初っから最後まで探偵小説としては異例なことばかりやってる作品なので
フィルポッツも普通の探偵小説であるって意識が無かったのかも。
マジ━━(;・ω・);・ω・);・ω・);・ω・)━━ィッ!?
0141名無しのオプ2023/10/30(月) 00:16:25.09ID:98YSqd4i
『サン=フォリアン教会の首吊り男』ジョルジュ・シムノン
メグレシリーズ3作目の作品。
ブレーメンまで旅をしていた男は自分が持っていた鞄がすり替わっていたことを知り自殺してしまう。
自殺した男の持っていた鞄には着古された服が入っていたが、メグレがその服を調べてみると自殺した男とサイズが全く合っていなかった。男は何者なのか、その鞄に入っていた服は一体なんなのか。
…と言った感んじのあらすじでなかなか魅力的なオープニングと謎で本作は始まる。その後も自殺した男の遺体を確認しようとする謎の人物が現れたり、謎の服が入っていた鞄が盗まれそうになったりと謎が謎を呼ぶ展開が続いて面白い。
基本スローテンポなメグレものの中では割とテンポ良く話も進むし、メグレが命を狙われたりと話に起伏がありエンタメ作品として楽しませてくれる。
捜査の末、メグレは真相に辿りつくが、そこまで意外性のある真相ではなくミステリーとして結末部分は物足りないところもあるかもしれんが
犯人の語る過去の物語は読んでて引き込まれる。
ミステリーとしてはトリックや意外な結末のある作品という訳ではないが、作品の空気感や雰囲気、登場人物の人生の悲哀、そういったものを堪能する作品としては非常に優れた作品であった。
0142名無しのオプ2023/11/06(月) 00:24:12.10ID:mWjaS5Nf
「ひよこはなぜ道を渡る」 エリザベス・フェラーズ
トビー&ジョージシリーズ5作目にて最後の作品。
最後の事件になった理由がホームズやポアロみたいな深刻なものでもなく、ジョージがもう犯罪事件はこりごりだからという軽いノリなのがこれまたこの作品らしい(笑)
弾痕、血痕と争った形跡のある部屋で死体が発見されたが、その死体の死因は心臓発作によるものだった…。
これまた変てこな状況で事件が始まり、そこからさらに話がこんがらがっていくのがまたこのシリーズらしい。
そういう複雑でこんがらがった事件で読んでて戸惑うこともあるが、読みにくいなんてこともなく登場人物もキャラが立っていてサクサク読める。
複雑な事件を理路整然と解き明かし意外性のある結末に持っていくのは流石、エリザベスフェラーズといったところだ。
ミステリーとしてもクオリティが高く、トビーとジョージ二人のやりとりも変わらず楽しくて(ちょっとジョージの出番が控え目なのは物足りないところがあるが)
この作品でこの二人のコンビの話を終わらせてしまったのはやっぱ勿体ないと惜しい気持ちにさせられたなぁ。
0143名無しのオプ2023/12/03(日) 01:54:50.78ID:xe/Zy1oi
『牧神の影』ヘレン・マクロイ
暗号ミステリーとサスペンスを組合わせた作品。
正直、暗号の話は実用的というか専門的すぎて読んでて全然頭に入ってこなかったな。ただ、それでも暗号を解くカギについてはなるほどと思えるものであり
そういう意味では優れた暗号ミステリーだったのかもしれない。
サスペンスの方は人里離れた山中のコテージで暮らす主人公アリスンの孤立感、暗号の秘密を知った事による狙われているかもしれないという恐怖、何か異常なことが起きているかもしれないという不思議な感覚なんかが良く書けていて
異様な緊迫感のある小説になっていたと思う。
読んでて超自然的な現象が本当に起きてるのでは?と思えてしまうのだが、真相パートではちゃんと合理的に事件を説明してくれるのだから流石のデキだ。
ただ、途中結末がどうなるのか予想がつかない!?とワクワクさせられた割には綺麗に話が収まりすぎた感があり少々拍子抜けしてしまったのも事実だ。
途中の結末に対する期待感を思えばもっと予想外で驚きのドンデン返しを求めていたのかもしれない。
0144名無しのオプ2023/12/06(水) 23:55:28.68ID:RX/SrV8u
ヒーリング系もしくはドローンアンビエントで最強のリラックスを手に入れてください。
自然の波音も入っているので、さまざまな周波数の恩恵を得ることができます。
神経過敏でイライラしやすい人、なんらかの依存症にも少なからず効果が期待できます。
食事前にナイアシン療法を行うと、効く人には大変有効と思います。
自然な形でセロトニンが増えれば、ほとんどの精神疾患は良くなっていきます。
薬も確実に減っていきます。それと同時に高タンパクな食事が大変大事です。
そして適度な運動で最強です。
試してみてください。//youtu.be/e1IPKVrDUoM
0145名無しのオプ2023/12/21(木) 00:16:10.15ID:jHcxFlKh
『代診医の死』ジョン・ロード
ジョン・ロード後期の作品。
イギリスの田舎の医者が休暇のために雇った代診医が話の中心人物となっている。代診医という他ではあまり選ばれない題材のためか新鮮味があり代診医が出てる序盤は面白い。
話が進むと代診医が案の定失踪し、遺体が発見され捜査となるのだが、この捜査が淡々と進行し最後の解決まで話が進んでいくので中盤はだいぶ地味で
ジョン・ロードは「退屈派」と言われるだけあって、まあ正直読んでて退屈だ。しかし、真相はなかなか驚愕のもので退屈を我慢して読む価値のある作品であったと思う。
しかし自分は運が良かったのかたまたま頭が冴えていたのか途中でほぼ真相を推理してしまってたが。
まあ、それでも面白いアイディアが使われていて良くできた作品であったと思う。
0146名無しのオプ2024/03/18(月) 22:03:51.19ID:Onk9iodN
『見えないグリーン』ジョン・スラデック
SF作家であるジョン・スラデックが書いた数少ないミステリー作品。…と言っても自分は作者のSF作品を読んだことがないけど。
SF作家だから奇抜なミステリーなのかと読む前は思っていたが、意外なぐらい正統派な本格ミステリー作品で、
密室もあり暗号もあり謎の怪人物もあり名作古典ミステリーのパロディありのてんこ盛りの作品でミステリーとしてかなり充実した作品じゃなかろうか。
登場人物も素人探偵フィンをはじめ、事件の発端となった『素人探偵会』のメンバーも個性豊かで面白い。
会話もユーモアがあるし、書評とか拝見すると無味乾燥なストーリーと人物というものをちょくちょく見かけるが全然そんな印象を持たないんだがなぁ。
で、ラストに明かされる真相の方もかなりの出来栄え。そのトリックだけで一つの長編を作れそうな殺人が3件もあるという出し惜しみないところも良い。(2件目だけはちょっと怪しいとこあったが)
密室ものの名作として評判の高さが納得の作品だったと言って良いと思う。
…一つ文句付けるならラストのシュール・リアリズムうんぬんのオチがよく分からんかった。
0147名無しのオプ2024/04/14(日) 03:11:40.02ID:Xa0rYq+M
『オックスフォード運河の殺人』コリン・デクスター
モース警部が入院中にたまたま貰ったはヴィクトリア朝時代の殺人事件を扱った研究書を読んだことから話は始まる。
その研究書に書かれる殺人事件の正否をモースが考察し推理するという謂わば歴史ミステリーで、このシリーズではだいぶ異色作であるように思う。
そのため迷走を繰り返すモースの推理は少な目でいつもとはだいぶ違った毛色なのだが、これはこれでモースの推理が合ってるかどうかを確かめるために物証を探す捜査は面白い。
ミステリーの要素だけでなくモースの入院生活を愉快に描いていて、その要素だけでも読んでて楽しめるぐらいだ。(ミステリー要素が割と薄めなのでそこがメインな気もしてくる)
にしても、モースは作中の描写を見るかぎり冴えない中年のおっさんにしか思えないのに無駄にモテるな…。
ちょっと作者の願望が入ってるのでは?と疑ってしまう(笑)