“白”の正体は官僚・外交・財界と多方面に
影響力を持つ某一族のご令嬢。彼女の言うには、
主人公が持っている自然言語処理に関する技術を、
是非とも押さえておきたいのだという。
すなわち、諜報機関の業務の九割以上は公開情報の分析であるため
外交・防衛上も重要であり、検索エンジンなどの用途もあって
産業面でも有用である。そこで主人公にはかねてか
ら注目していたという。ところが、実用化・商業化に際して問題が生じた。
そもそも処理の基礎になっている記述文法の専門家が、
日本国内に多く見積もっても二十人程度しかいない。
その一人が“青”であって、他にもいろいろと役に立つ素養の持ち主である。
そこで実用化と商業化に際して、引っ張ってくることにしたという。
さらに関連企業の中から使えそうな人材を集めて今回のプロジェクトに
臨んだのだが、いかんせん国文法とかそういった方面の話題に
ついて来れず、軒並みリタイヤしてしまったのだという。
「と、いうわけで、チームを再編成して新規播き直しというわけ」
「なんで私が入ってるんですか?」と“赤”。
「じつは、先日のプロジェクトの最中、全員の会話を
記録させてもらってたの。で、その分析結果から、
あなたがこの方に好意を持っているというのが分かったので。
官側のメンバーが一人もいないというのでは差障りがあるのと、
セキュリティの点を考えると、“身内”の人間のほうが安心なので。」