「ねぇあっちゃん、あれ何かな? ちょっと懐中電灯で照らしてみてよ」
ゆう子が指差す先は教室の窓ガラスだ。
教室の中に何か見えたのだろうか? と思いつつ懐中電灯を向けようとすると、
ゆう子が急に振り向いてぶつかってしまった。
「今動いた! 何よアレ!」「やだ、真っ暗。あっちゃん悪ふざけはやめてよ」
「懐中電灯を落としちゃったのよ。一緒に探して」
月明かりがあると言っても歩くのに困らない程度で、影になっている場所は手探りするしかない。

ゆう子もしゃがみ込み、一緒に探し始めた。手がほこりで黒く汚れるのを見て、顔をしかめながら言った。
「さっき白い人影のようなものが見えたの」

「懐中電灯を見つけるのが先よ」
どうせ何かの見間違いだろうと聞き流す。
ゆう子は怪談のような話が大好きで、あやしげなうわさ話を聞きつけては
今回のような探検に私や他の友達を巻き込んでいる。