後期クイーン問題とは、「探偵の存在」が物語に対して大きな影響力をもつ構成であり、
中期〜後期にかけてのエラリィ・クイーン作品に見られる大きな特徴の一つ
従来の推理小説における「探偵」は舞台外から現れ事件を俯瞰する神のごとき視点を持ち、
言うなれば事件にかかわりのあるいずれの派閥にも属さない第三者機関のようなもので、
犯人は勿論、事件被害者や容疑者たち当事者とは一線を引いた存在だったのです
しかしクイーンの中期以降の作品では、そうではなく、
犯人が引き起こした事件を、現れた「探偵」が解決するのではなく、
事件は「探偵」の存在を前提に開始される。「探偵」自身が初めから事件と大きなかかわりを持ち、
必然的に渦中の人物とされ、犯人の仕掛けるトリックに「探偵」の行動や言動が組み込まれている構成です
つまり後期クイーン問題とは、作中世界において探偵の存在なくしては成立しないトリックであり、
メタの視点を持つ立場から引き下ろされ、いちキャラクターに成り下がってしまった「探偵」の苦悩を描くもの
真相解明のプロセスが不可欠なミステリというジャンルにおいて、それを語るキャラがいなくなるという問題