今年最後のネタに、マリアナ沖の時点における、日本海軍の敵信傍受のネタを投下しよう。
出典は、海軍反省会第3巻(第35回)で、発表者は中島通信参謀である。

まずは、連合艦隊の大散歩(18年10月)から。
10月12日、ハワイ周辺の哨戒機が増加していることを、確認した人がいる。
哨戒機から発進される電波を数多く受信したのだろう。
更にハワイ沿岸防備隊指揮官から、作戦緊急信が発信したことを受信した。
10月6日にウェーキ急襲したときと、ほぼ同じような通信情況だった、と。
これを踏まえ、GF特信班も、軍令部特信班も、共に「敵有力機動部隊ハワイ出撃の算大」と判断した。

昭和18年10月段階では、海軍の通信屋さんは、米機動部隊ハワイ出撃か否かを判断できるほどの
敵信傍受のノウハウを積み重ねた、と言える。

次いで、19年3月のパラオ急襲(古賀GF長官の戦死)に纏わるネタ。
3月25日頃、GF特信班は、ハワイ放送(通信)の中に、空母機動部隊らしき呼出信号を発見した。
これは、空母機動部隊が行動中であることを意味する、とのこと。
次いで26日、アドミラルティー諸島の哨戒機(の電波)が増加し、27日に最高に達した。
26日は北東方面だけ(電波を探知)だったが、27日は北側全面に広がったことを掴んだ。
これらの事象から、中島参謀は、機動部隊がアドミラルティー北部海面を作戦行動中、
恐らくパラオに来るのでは、と推定した、とのこと。

これを踏まえ、メレヨン島の哨戒機を、通常は300マイル哨戒しかさせなかったところ、
28日は特別に600マイル哨戒をさせた結果、メレヨン島の173度422マイル地点で、敵機動部隊を発見する。
29日は、ペリリュー島から哨戒機を発進させ、パラオ南端へ16節で航行してる事実を掴む。
30日早朝から、パラオ空襲が始まるわけであるが、見事に日本海軍は敵機動部隊の動向を掴むことに成功してる。

これらから、何が言えるか?
草鹿や源田がこのとき力説していたように、米機動部隊が本当にビアク方面に出てくるなら、
アドミナルティー諸島南部海面を航行するだろうから、
米軍アドミナルティー諸島の哨戒機の電波をウォッチしてれば、ビアク空襲数日前に、特信班はその動向を探れる、
ということを意味する。中島参謀がマリアナ来襲説を主張し続けていた根拠はコレか?