>>692-693

ヴェルナー・フォン・ブラウンはアポロ計画の立役者のひとりである。

ペーパークリップ作戦で連れてこられた科学者とともにNASAの職員となり、サターンVロケットの開発にまい進する。
彼の先進性と功績は宇宙開発に沸くアメリカでおおいに持てはやされ、著作などで莫大な財産を築く。

セレブの仲間入りを果たしたフォン・ブラウンだが、彼もまたナチス親衛隊少佐という過去を持ち、SS長官ヒムラーとの関係も深い。
彼を含めた多くのロケット科学者と技師が戦中はドーラ=ノルトハウゼンという地下のロケット組立工場に勤務していた。

この秘密工場では、多くのロシア人、ユダヤ人、ポーランド人やフランスとソ連の戦争捕虜などの奴隷労働者が働いたという。
彼らの置かれた環境は極めて劣悪で数万人の奴隷労働者がこの地下工場で死亡している。見せしめの公開処刑も度々、行われていたという。
当然これらの事実を彼らが知っていたはずだ。
しかし、渡米後のフォン・ブラウンはナチ支持者だったことを否定し、
詳細な注意を払いながら自身が反ナチであったという神話を創りだしていく。

結局フォン・ブラウンは、1977年に「ナチ・ハンター」から逃げ切って65歳で死去した。

フォン・ブラウンは「ナチス親衛隊少佐」という暗い過去を背負っていたが、
戦後、彼がアメリカという新天地で「科学の進歩」に多大な貢献をしたことは否定できない事実である。



他方、戦後ペーパークリップ作戦によりアメリカに移住した後に宇宙飛行士が着用する圧力服を開発し、
初期のアメリカの宇宙進出に多大な貢献をしたHubertus Strughold,博士は、
第二次世界大戦中、強制収容所の囚人を使った人体実験に関与していたのが
「ナチ・ハンター」の仕業によって暴露されてしまい、名誉失墜の憂き目を見ることになる。
http://www.cscd.osaka-u.ac.jp/user/rosaldo/operation_paperclip_file_029.html