太平洋戦争の全般的な影響に関する評価は一層難しい。戦争が他のさまざまな影響を混
在させている場合、全般的な影響がはるかに大きくなるためである。加えて、いかなる評価も、
仮に歴史が別の経過をたどっていたとしたらという可能性を連想させ、事実に反した解釈に
つながるものである。仮に太平洋戦争が起きなければ、米国とドイツは果たして戦争したで
あろうか。戦争になったなら、その時期はいつか。インドとパキスタンは分離していたであ
ろうか。中国は共産化したであろうか。英国はオーストラリアやニュージーランドと袂を分っ
てヨーロッパ共同体に加入していたであろうか。日本は国際連合発足時から安全保障理事
会の常任理事国になっていたであろうか。仮に1945 年に核兵器が使用されなければ、現在、
核兵器保有国は9カ国であったろうか。太平洋戦争は疑いなく劇的な影響を及ぼしたが、
仮にこの戦争がなければ物事がどのように推移していたか、歴史家は推測することしかできない。

平成 24 年度 戦争史研究国際フォーラム報告書
チャーチルの戦争、アトリーの平和   フィリップ・トウル
http://www.nids.go.jp/event/forum/pdf/2012/07.pdf