>>540の続き
 
一方のコニャックはというと、これは機内マニュアルに紛れ込ませた。 「それは分厚いマニュアルなんだ。
表紙をとると、ページのかわりに容器がしつらえてある。1〜1.5Lは入る容器だ。一番気を付けるべきことは、液体をごぼごぼ言わせないことだ」
 
先日亡くなった飛行士のゲオルギー・グレチコ氏(宇宙滞在時間は134日20時間32分58秒に上る)はまた別の、より複雑な手口について書いている。
宇宙では、筋萎縮を防ぐため、最低でも一日2時間の運動が必要になる。 そのために、船内には特殊なスーツが備えられている。
それを着ると無重力でも強制的に筋肉運動が引き起こされる、というものだ。
交代でステーションを訪れる飛行士たちは、そのスーツの中に「隠し物」を残していったという。

「あるとき我々は、運動スーツに『エレウテロコックスB』(和名ウコギ。天然の強壮剤)と書かれた1.5L水筒が隠されているのを見つけた。
開けてみると、なんとびっくり、中身はコニャックだ!我々は計算してみた。
計算では、毎晩寝る前に8.5r飲める。しかし、結果的には、半分しか飲めなかった。 これは、ひとえに『注ぐ』ことができなかったことによる。
なにしろ液体は空気と同じく重量ゼロなので、流れ出るということがない。
押し出そうとしても、空気と混ざって泡になるばかり。 仕方なく、半分を飲み残して、水筒をもとの場所に置いていった。
さて、私どもの次の飛行士たちが滞在を終え、地球に帰還して、『あのコニャックは飲み干した』と語ったときの、驚きといったら!一体どうやって?

――彼らの考え出した方法はこうだ。 一人が天井に上り、水筒を唇で保持する。 二人目が彼の頭を打つ。 一人目は下へ降りる。
液体は慣性により流れ出し、彼の口へと入っていく・・・。
そうして役割を交代するわけだ。『高等教育で得た知識だけでは足りない。少なくとも人一倍の知恵がなければ』と彼らは言った」(後略)

https://jp.rbth.com/science/2017/04/14/742165