米国のトランプ大統領は、22日、<西部アリゾナ州の集会で演説し、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長が
「我々に敬意を払い始めたのではないか」とした上で
「何か前向きなことが起きるかもしれない」と語った。

具体的には言及しなかったが、北朝鮮の核・ミサイル開発問題の外交解決に向けた水面下交渉の進展を示唆した可能性がある。>(23日、YOMIURI ONLINE)

北朝鮮がこのまま大陸間弾道ミサイル(ICBM)の開発を進め北米大陸に到達することが可能になるとする。
そこに小型化された核弾頭が搭載可能な状態になると、北朝鮮は米国にとって現実的な脅威になる。

トランプ大統領の交渉スタイルは不動産業の時と変わっていない。
米国と北朝鮮の間でもディール(取り引き)が交渉で行われる。

筆者が恐れるのは、米国がパキスタンに対するのと同じ姿勢で北朝鮮に接することだ。
米国はパキスタンが核兵器を保有することを事実上認めている。

それはパキスタンが保有する核兵器運搬手段が中距離弾道ミサイルだけで、米国まで到達することがないからだ。
そもそも戦略核と戦術核の区別は、米国まで到達すれば戦略核で、到達しないものが戦術核だという米国中心主義的な概念だ。

中距離弾道ミサイルの「ノドン」に核弾頭が搭載された場合、米国にとっては戦術核に過ぎないが、日本にとっては戦略核になる。

米国が、北朝鮮の核と中距離弾道ミサイルを容認することになると、日本の国土全体が北朝鮮の弾道ミサイルの射程圏内になる状況が固定化する。

こういう事態になったらどのような対応をすればよいのであろうか。
非核3原則の「持たない」「造らない」「持ち込ませない」のうち、3番目の「持ち込ませない」を撤廃し、日本国内の米軍基地に核兵器を置いて抑止力を強化するというシナリオが出てくるであろう。

もっとも米国には、どこに米軍が核兵器を展開しているかについて明らかにしないという原則がある。
この原則を日本の安全保障を強化するために撤廃し、日本に米国の核が存在することを明言するようになるとは思えない。

日本がとても厳しい国際環境に追い込まれる可能性がある。
(作家・外務省元主任分析官)

http://www.hochi.co.jp/topics/serial/CO021131/20170826-OHT1T50211.html