私の読書日記/谷川俊太郎と佐野洋子、沖縄戦秘史、おっぱい、ヴェノナ文書
◆立花隆
週刊文春(2018-07-12), 頁:128
https://www.zasshi.jp/pc/action.php?qmode=5&;qword=%E9%80%B1%E5%88%8A%E6%96%87%E6%98%A5&qosdate=2018-07-05&qpage=6
 ×月×日
 渡辺惣樹『第二次世界大戦 アメリカの敗北』(文春新書 1100円+税)は、絶妙に面白いだけではなく、現代史の見方が
根本からひっくり返る本だ。アメリカの国務省高官と財務省高官のトップ官僚二人が二人ながらにソビエトののスパイだった
という驚天動地の史実を明らかにした「ヴェノナ文書」。それを解読したのは後のNSA(米国家安全保障局)だった。
「はじめに」から、終章、年表まで丹念に読むことをおすすめする8その価値充分あり)。米国情報公開法に基づいて、
ヴェノナ文書が公開されたのは、やっと95年になってからなのだ。
 私が学生だったころは、マッカーシズム(非米活動委員会)などは悪評サクサクたるものだったが、いまや、悪評は全く逆に
なっている。歴史をこの地点から学べるいまの若い人は幸せだ。
 トランプの時代、米朝会談などにしろ、あと一世紀たってから見直すと、何が正しかったか、別の見方が一般的になっている
のかもしれないと、ふと思った。歴史の常識がひっくり返ることは、いつの時代もある。
 オビにあるように、ハルノート原案、ヤルタ会談、国際連合、ブレトンウッズ体制などすべて二人のソビエトスパイが操って
いたのが現代史だったのだ。一昔前なら歴史文書と信じられていたことを全否定するような内容が、いまや歴史的真実として
情報公開の対象になっているのだ。歴史の書き換えはどんどん進んでいる。