>>805
素人だから反論として放射光つまりシンクロトロン放射を持ち出すと思ったよ

だがね、今で言うシンクロトロン放射という物理現象は少なくとも20世紀初頭までには物理学の常識になっていたのだよ
荷電粒子を加速運動(直線運動でなく軌道を磁場で曲げるのは立派な加速運動)させれば電磁波(今で言う放射光)が出るというのは量子力学の生まれる前に知られていたのだ
逆に、この現象(シンクロトロン放射)が知られていたからこそ、原子が安定に存在するというのは当時としては極めて不思議で量子論誕生の大きな動機の一つになったのだ
つまり、原子は+電荷を持つ原子核の周囲を電子という−電荷を持つ荷電粒子が周回運動している筈だが、
だとすればシンクロトロン放射によって電子は速やかにエネルギーを失い原子核に墜ちこんでしまうはずだからだ。
ところが電子はいつまでも原子核に墜ちず核外に留まる、これは不思議極まりない現象だったのだよ、当時の物理学者にはね。

またシンクロトロン放射のスペクトル強度の理論計算方法などは物理学の知識としては高エネルギー物理とは無関係に確立した

というわけで人類が高エネルギー物理学には全く触れようとしなかったとしても、材料科学や生命科学などが分析法としてシンクロトロン放射光を必要とする段階まで発達すれば
放射光専用の加速器を建設するという歴史になったのは間違いない、なぜならばどのぐらいの規模の加速器でどのぐらいの波長と明るさの放射光が出るかは
理論計算から予測できるからだ、高エネルギー物理の知識などゼロでもね

つまり、高エネルギー研究所KEKの巨大加速器なしに最初から(素粒子物理用でない)放射光専用施設であるSPring-8を建設するような歴史になっただろうということだ

もちろん、その場合は先行する高エネ用加速器による技術の蓄積はないので、放射光専用加速器として加速効率や輝度の向上などを工夫する必要はあっただろうが
現実のSPring-8と同等の放射光施設を建設するまでに要した延べコストは、高エネルギー物理用加速器を多数建設してからSPring-8に至った実際の歴史よりも
ずっと少なくて済んだのは間違いない(最初から放射光という応用に特化して性能チューンを進められるので、素粒子物理用という枝道へのコストは不要だからね)

(続く)