2年後に猫の寿命が倍に? 死因トップの腎不全から猫を救う特効薬の最前線
https://dot.asahi.com/aera/2018020800005.html?page=1
ネコの死因トップを占める腎不全に立ち向かう製剤や機器の開発が進んでいる。
「ネコの寿命30歳」を現実のものとすべく奮闘する最新の医療現場を追った。

宮崎教授は、血液中にある「AIM」という約350個のアミノ酸からなるタンパク質が、
人間やネコの腎機能改善に大きく寄与していることを立証。16年に相次いで研究論文を発表した。
このことは同時に、「ネコは人間と違い先天的に活性化しないAIMしか保持していないため
腎機能障害に陥りやすい」というメカニズムも解明した。
そこで宮崎教授は、人為的に大量抽出したAIM製剤を開発し、
それをネコに投与すれば死因のトップを占める腎不全の治療に画期的な効果を及ぼす──そう確信し、
冒頭の「寿命倍」発言につながったのだ。

宮崎教授は言う。
「AIMタンパク質を薬剤として開発するに当たっては、いかにして純度と生産性を担保するかが最大のハードルだと考えていました」
AIMタンパク質の製剤過程は、化学的に合成するのではなく、抗体医薬などと同じように、
体外で培養した細胞の培養液から抽出する生物学的な手法に基づく。
このため、薬剤として効率的に大量生産するにはコスト面で高いハードルが予想された。
ところがこの難題は、17年4月の段階でクリアできたという。高純度のAIMを大量生産できる細胞の開発に成功したのだ。
「研究室で培養してきた細胞と比較すると、最大500倍という効率の良さで、かつ高純度のAIMが生成できる細胞を開発しました。
何百万個の細胞の中から創薬に理想的な細胞をこんなに早く見つけ出せたのは本当に幸運でした」(宮崎教授)
AIMタンパク質製剤は、ネコの腎不全治療薬としてだけでなく、前段階である泌尿器疾患全般の予防薬としても効果が期待できる。
「2年後に猫の寿命が倍になる」のも、まんざら夢ではない状況だ。
一方、高齢ネコに多くみられる、体内の老廃物を排出できなくなる「慢性腎臓病」の進行を遅らせる抑制剤が17年4月に発売された。
動物用医薬品として国内で初めて、「腎機能低下の抑制」の効果・効能が認められた「ラプロス」だ。


猫より人間に投与しろよ