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(続き)
 WTO協定でも反ダンピング関税や政府の補助金への相殺関税、一律に関税を課せるセーフガード(緊急輸入制限)などを認めている。
だが米国内には、反ダンピング関税などは「限られた国の限られた製品にしか対処できない」との不満があり、中国の供給過剰という
根源的な問題への対応は難しいとみている。

 このため、トランプ政権が持ち出したのが大統領に大きな権限を与えた通商拡大法232条という国内法だ。秋の中間選挙を控える
トランプ政権は、より自在に「米国第一」を印象付けやすい国内法に活路を求めた。週内にも詳細を正式発表する見込みだ。

 米中の摩擦で生じた火は世界に広がる。欧州連合(EU)や中国などは、米国からの輸入品に報復関税を課すことをちらつかせている。
ここでもWTOの限界が浮き彫りだ。米が各国からWTOに提訴される可能性は高いが、審理中は高税率が適用される「上げたもの勝ち」の
側面が強い。

 「報復関税が乱れ打ちになれば、自由貿易の終わりだ」。日本の経済産業省幹部は話す。米が関税上げの根拠とするのは安全保障。
海外からの鉄鋼製品に押されて自国の高炉の稼働率が落ちたり閉鎖に追い込まれたりすれば、飛行機や兵器など防衛装備の調達に
支障が出ると主張している。

 確かに、輸入制限を原則禁じるWTOでも例外規定として安全保障を認めているが、定義は必ずしも明確ではない。米に高い関税を
やめさせるには2国間で協議して説得するか、貿易紛争を仲裁する裁判所であるWTO紛争処理小委員会(パネル)に提訴し審理して
もらうしかない。

 だが米が各国の説得に応じる可能性は低いうえ、パネルの判断が出るまで2〜3年かかることが多い。米が第二審にあたる上級委員会に
上訴することも可能だ。トランプ政権の政策は、国際貿易のルールの機能不全を突くという意味でも、世界で保護貿易のリスクを高めることにつながる。
(終)