>>80
「ただし、この決定は、その「腹案」という言葉が示す通り、国の「正式」な「戦争計画」と呼ぶには、やはり不完全なものであったと言わざるを得ない。
実際、この「腹案」は、この年の9月6日に対米英開戦の方向を最初に決めた「帝国国策遂行要領」の御前会議の決定以降、
陸海軍省部および外務省の事務レベルで、対米英蘭戦争の開戦に当たっての基本戦略、戦争目的、対外施策等を含む全体の戦争計画として立案準備された「対米英蘭戦争指導要綱」の中の一部分のみ抜き出し決定したものであった。
逆に言えば、この全体の戦争計画の多くの部分は、国レベルの決定に至らなかったということなのである。
その原因は、一言で言えば、米英との戦争という国力上から見ても途方もない戦争について、理路整然とした戦争計画を描けなかったということにつきると思われる。」

防衛省防衛研究所フォーラム「太平洋戦争開戦時の日本の戦略」
http://www.nids.mod.go.jp/event/forum/pdf/2009/04.pdf