「製造できる」と「開発できる」の違い

Y:しかし当初、三菱重工は、MRJを自社の技術で開発できると考えていたわけですよね。
 大規模な投資が必須の開発に踏み切るという経営判断を下すにあたっては、相応の根拠があったと思うのですけれども。

四戸:多分に自己認識が間違っていたのだと思います。確かに三菱重工はボーイングとの協業の中で、航空機製造に関しては高い技術を獲得してきました。
 が、それは製造の技術であって、ゼロから航空機を設計し開発する技術ではなかった。そこを見誤ったのだと思います。

 そこには、多分にボーイングの“うまさ”というものもあったのかもしれません。ボーイングの社長は、よく「787は日本製だと言っていい」と言っていました。

Y:リップサービスだった?

四戸:リップサービスですよ。
 だって787の機体システム全体の設計に日本企業が参加したかといえば、そうじゃありませんから。
 日本の航空産業は、1980年代の「767」以降、「777」、「787」と、ボーイングと協力してきましたけれども、その役割は単純に言い切ってしまえば下請けです。
 米国が引いた図面を受け取って、航空機の一部を作ってきたんです。

 もちろん、その経験の中で製造技術は進歩します。色々な工夫をこらしてボーイングが期待していた以上の部品を作り上げてきたわけです。
 お世辞抜きで、ボーイングからすれば他に代え難いパートナーとして成長してきたのだと思います。

 たとえば主翼と胴体が交差するセンターセクションという部位があります。胴体に隠れてしまう部分です。非常に複雑でかつ強度的に重要で、航空機の心臓といってもよい部位です。

 このセンターセクションの製造は日本メーカーが行っています。日本に任せるというのは、ボーイングが日本の製造技術を信用しているということですし、同時に日本の製造技術の高さを示しています。
 もうひとつ、日本の工作機械メーカーが世界的に最高水準にあることも見逃せません。

 しかし、つくる、という言葉には、「作る」と「創る」があるんですよ。日本人は作ることに関しては本当に長けていますね。
 でもそこで、ゼロからの創造を意味する「創る」も長けている、と勘違いしてはいけなかったんです。