豪潜水艦商戦、日本案再浮上の気配
2019/1/29 5:50 日本経済新聞 電子版
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO40552100Y9A120C1I10000/

オーストラリアが2016年4月に決めた豪海軍次期潜水艦のフランスへの発注が揺らいでいる。ここにきて豪国内から異論が相次ぎ、
年内に予定される議会選挙など今後の展開次第では発注が取りやめになる可能性が出てきたのだ。海上自衛隊が運用する
最新型潜水艦に米国の武器システムを搭載した日本の当時の提案を最善とする声は、今なお豪国防関係者の間では根強いとされる。
防衛装備品の輸出は国際的には単なるビジネス以上に、安全保障上のパートナー国との協力を深め、情報収集体制を強化する
手段として位置づけられる。日本は、再浮上しつつある案件にどう向き合うかに加え、官民にまたがる輸出体制をいかに刷新するかが問われている。

■仏への発注、取り消しも
豪海軍の潜水艦更新計画は、現有コリンズ級の老朽化を受け、新たに12隻の新型潜水艦を2030年代までに配備するのが柱。
日仏などが受注競争を展開したが、2016年、豪州経済への波及効果などを巧みに訴えたフランス提案(仏バラクーダ級原子力潜水艦を
通常動力化した新型を豪州で建造予定)を、当時のターンブル政権が採用した。

ただその後、計画の細部を詰める「戦略的パートナーシップ協定」(SPA)の締結交渉が難航。知的財産の移管やトラブルが起きた
場合の補償をめぐる対立が原因と報じられた。現有のコリンズ級はスウェーデン企業の設計に基づき豪州で建造したが、故障が多く
稼働率が極めて低いことに豪海軍が苦心。こうした経緯を踏まえ、「現物」がいまだ存在しない新型に故障が発生しても迅速に
修理・改良できるよう、仏が持つ技術情報などをあらかじめ開示するよう豪側が求めているものとみられる。

(続く)