>>528 (続き)
■防衛装備輸出は安保協力の手段

一般に防衛装備品の輸出は民生品輸出と違い、利益を得ること以上に輸出相手国との安全保障上の結びつきを強めることを
強く目指す。現在は米防衛企業の幹部として働く元米軍人は「防衛装備品を売るということは『仲間』を増やすということなのだ」と
強調する。米英仏などは防衛装備の輸出を通して軍同士の人的交流を深め、インテリジェンス体制の強化にも役立てている。

安倍晋三内閣が2016年の受注合戦に乗り出したのも、中国の軍拡に対抗するためには日米と豪州の3国間協力が不可欠で、
そうりゅう級に米国製武器システムを搭載した潜水艦を豪海軍が配備することは、日米豪の間で装備の共通化を進め防衛協力を
深化させる象徴的事例となると考えたためだった。

ただ当時の日本は受注に失敗した。主な原因は、(1)日本の潜水艦メーカー(三菱重工業と川崎重工業)が、豪州で現地生産
すれば建造に関わる機密情報が流出し、最終的には中国などにわたるリスクを強く警戒したほか、利益を上げられるとの確信も
持てなかった(2)日本政府は関係企業を説得できるだけの材料を提示できなかった(3)さまざまな障害を乗り越えてでも装備品輸出を
実現することが国益上必要だとする「総意」が官民にまたがる日本勢にできていなかった――などにあった。

(続く)