政府が、北大西洋条約機構(NATO)基準を採用し、防衛費の対GDP(国内総生産)比1.3%を目指すのは、主要国並みの防衛費を確保することで同盟国に「応分の負担」を求めるトランプ米大統領の圧力をかわす狙いがある。
同時に、中国の急速な軍拡に対抗するには、現状の1%水準では不十分だとの危機感もある。

 現在の日本の防衛費は約5兆円で、対GDP比は0.9%にすぎない。関連経費をあわせて1.3%となれば7兆円規模に膨らむことになる。
それでも主要国に比べれば多くはない。

 防衛費の増額は「トランプ対策」(政府高官)の側面が強い。
トランプ氏は米国の国防費の膨張に不満を持っており、NATO加盟国に国防分野の支出を対GDP比4%に引き上げるよう求めている。
とりわけ、1.2%にとどまるドイツへの風当たりは強い。いずれ、その矛先は日本に向く可能性は否定できない。

 外務省幹部は「防衛費は『必要経費の積み上げの結果』というのが基本だが、国際社会では対GDP比も重要な指標だ。
防衛費の増額やその見せ方は、トランプ氏を納得させる上でも重要になる」と語る。

 しかも、中国は国防費を30年間で51倍にまで拡大しており、国産空母や高いステルス性能を持つ最新鋭戦闘機の開発などを急いでいる。
平成30年版「防衛白書」によると、中国国防費の対GDP比は1.3%だが、金額ベースでは日本の約6倍。
公表されている国防費は全体の一部にすぎないとの見方が支配的だ。

 軍備増強と歩を合わせるように、中国は軍事活動も先鋭化させている。

南西諸島周辺の海空域に艦艇や軍用機を頻繁に派遣し、挑発行動を繰り返している。武装した公船による尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺での領海侵入もやまない。
日本にとって重要なシーレーン(海上交通路)である南シナ海での軍事拠点化も着々と進めている。

 こうした脅威に対抗し得る防衛力を整備するには、装備や人員の質量を格段に向上させる必要がある。
さらに、安倍晋三首相が「死活的に重要」とするサイバー、宇宙、電磁波など新たな領域にも防衛予算を本格的に投資すべき段階を迎えている。
厳しい財政事情を考慮しても、従来の対GDP比1%水準では追いつかないのが実情だ。