一九四四年、技師たちはボブ・ジョンソンの所属する第五十六戦闘機連隊の「サンダーボルト」に新しいプロペラを装備した。
 ジョンソンは「技術将佼たちは、『サンダーボルト』のために特別に設計された新しいプロペラについて、激論をたたかわせた。
 彼らは新型プロペラの太くて短い羽根は、性能を驚くほど向上させるだろうと主張した。……
 我々は、話半分にききながらも、その熱心な議論に耳をかた向けた。そして、新型プロペラをつけた機で飛んでからは二度と、疑いをもつことはなかった」と、次のようにのべている。

 二四〇〇メートルでのテスト飛行のさい、私は「サンダーポルト」を急上昇させた。
 通常この機は、急速に速度をまし、それから速度がおち、失速に近づいていく。
 しかし今度は「サンダーポルト」は気違いのように上昇していった。
 別の「サンダーポルト」が空中にいて、私は上昇の合図をした。
 私は技術将校ではないし、毎分何メートル上昇したかは正確には知らない。
 私は、他の戦闘機を眼下に、あたかも、それが静止しているかのように引きはなした。
 「サンダーボルト」は尾部で立って空に向って一直線に上昇していった。Fw190もMe109も「サンダーポルト」の上昇力をしのぐことはできなかった。新しいプロペラは、一〇〇〇馬力あるいはそれ以上の価値があった。
 のちに、私は「スピットフアイア」9Bと競争する機会をもった。
 我々が双方とも戦闘機に全力をださせたが、「サンダーボルト」は、かろうじて「スピットファイア」から、逃げおおせた。