映画版『空母いぶき』は「三流役者」ならぬ「三流映画」だった/古谷経衡

つまり『空母いぶき』とは、骨太のポリティカル・ミリタリー作品なのだが、実写版ではこの要素が全くないどころか原作改悪のオンパレード。
そもそも映画版では、日本の敵として、中国ではなくフィリピン北東部にあるという建国3年のカレドルフ(なぜかこの国家は東亜連邦と名乗る)という新興島嶼国家というふうに設定が改悪されている。

いろいろな方面に忖度したのだろう。
実際、麻生幾原作の映画『宣戦布告』(’02年)も、北朝鮮の武装工作員の国籍は北朝鮮ではなく「北東人民共和国」という架空の国家に変更されていた。
では、軍事的描写はどうかというと、「いぶき」の僚艦の艦長が「本気になると関西弁になる」という設定で、主砲を発射するたびに「いてまえ!」と絶叫するという、頭痛がするシーンの連続。

こんなふざけた邦画を見るのも久しぶりで、国内は当然だが、到底海外にお見せするような完成度には至っていない。
それでも観たければ、2時間超の拷問を受ける覚悟でお好きにどうぞ。