(続き)
ナイトロジェンマスタードが抗がん剤として用いられるようになる経緯は、上でも書いた
43年のバーリ港空襲でマスタードに被曝した人達の治療過程で、白血球の減少と
細胞染色体への影響が確認された事。
それとは別に民間でも同様の研究がされていて、ギルマンの実験は有名だけど、
ギルマンの医療転用は解毒過程じゃなくて、マスタード被曝の症状がX線被曝時と
同様の症状(白血球減少、染色体異常など)を示すので、当時はX線の照射しか
治療法がなかったガンの治療にも行ける気がして、使ってみたもの。
実験には当時すでにあったHN-2をそのまま使い。末期がんの患者に
投与してみたのが42年。
効果はあったけど、患者は副作用(毒ガスとしての効果)で死んでしまった。

上記の例から医療用として使うために毒性を弱める研究をする事になり
それで開発されたのが46年のHN-3。

もっとも、それでもまだキツくて。実験投与された患者は死亡した。
実際にナイトロジェンマスタードが医薬品として実用化されるのは、48年に日本の東大で
毒性を大幅に弱めたナイトロミンが開発されてから。