警察予備隊の編成は当初、旧軍の幹部を排除して行われた。背広組トップの増原恵吉長官も、制服組トップの林敬三総隊総監も、元内務官僚だった。そのため、上級指揮官の不足が悩みのタネだった。

NHKの記者を辞めて入隊した坂本力という人物は、東大卒で、戦時中に見習士官だったことを買われてか、いきなり一等警察士(大尉)に。しかも、中間司令部A司令官にも任命された。これは、現在の北部方面総監にあたる、中将級のポストであった。


坂本はいきなり下から3番目の階級に任命されただけではなく、さらにその5つ上の階級に相当する職務を任されたということになる。

もっとも、このような状態は長く続かなかった。新しい指揮官がやってくると、つぎつぎに「格下げ」を食らったという。

「それから1ヶ月ぐらいしたら正式な司令官が任命されてきて私は師団長に、4日ほどするとまた正式な師団長が来て連隊長に格下げ。そこで部隊移駐の命令で12月初めに約1000人の連隊を連れて宇都宮へ行った。そこへ本物の連隊長が赴任してきて、私は連隊の情報幕僚に。その連隊長と顔を合わせたら、私を追い出した仙台の師団長。彼も正式ではなかった。

とにかく一夜にしてなった中将から元の一尉(引用者注、大尉)に下がるまで約3ヶ月、その後、一尉から陸将(中将)になるまで25年かかった」(読売新聞戦後史班編『「再軍備」の軌跡』)

このような役職の乱高下は、まさに草創期ならでは。今後、お目にかかることはないだろう。