>>641
(有料部分補足)
米国製の防衛装備品の購入を巡っては、しばしばこうしたトラブルが生じる。なぜ繰り返されるのか。

「もう少し配慮してほしい」。岸信夫防衛相は3月16日、初めて対面で会談したオースティン米国防長官に
F15の改修問題を提起し、協議のやり直しを求めた。改修が滞れば日本の防衛力に支障を来すとも伝えた。

F15は空自が運用する3種類の戦闘機のうち、200機ほどと最も多く運用する主力だ。日本政府は2019年度から
5年間の中期防衛力整備計画で、長射程ミサイルや電子戦システムを搭載する改修を盛り込んだ。

見積もりの3倍
メーカーは改修に向けて設計や生産ラインの道具などを準備する。米側はこれら初期費用を当初807億円と
見積もったが、昨年になって2400億円もかかると日本側に伝えてきた。電子戦の機材に使う部品が枯渇し、
特別な対策が必要になったなどと説明した。

大手商社に20年以上勤務し、外国企業とビジネスの経験を持つ岸氏は米側の急な価格のつり上げに違和感を抱いた。

「こっちは買い手だ。ない袖は振れない」と省内で説き、日本として支払えないものは支払えないと主張して
落としどころを探るよう指示した。

防衛装備品の輸入には通常のビジネスと異なる特殊な仕組みがある。

「対外有償軍事援助(FMS)」と呼ぶ制度だ。米政府が安全保障政策の一環で同盟国などに装備品を
有償で提供する制度で、F15の改修も大部分をFMSで進める。

メーカーとの直接契約でなく米政府を通じて調達するため米側の意向が左右する余地が大きい。

米政府は相手国と合意を結んだ後にメーカーからの調達を始める。合意した時点で見積額を出すが、
合意後にメーカーが検討した結果、価格が跳ね上がるケースが出る。米側の都合で納期が遅れることもある。
(続く)