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テドロス氏は二〇一七年、WHO事務局長に選ばれた。この人物の特徴を表すのが、就任早々、ジンバブエの
独裁者、ムガベ大統領を親善大使に任命したことだ。「国民医療サービスの実現に尽力した」というのが理由
だが、事務局長選でアフリカ票をまとめてくれたお礼だというのは、見え見えだった。ジンバブエは平均寿命
六十一歳で、世界でも最も短命な国の一つ。米欧は一斉に反発し、テドロス氏は早々に任命撤回を迫られた。
国際世論などかまわず、「自分を支持してくれた人には、手厚く」というのが流儀らしい。

中国にとって、エチオピアはアフリカ政策の要衝である。習政権の巨大経済圏構想「一帯一路」に加え軍事でも、
重要な位置を占める。首都アディスアベバにはアフリカ連合(AU)、国連アフリカ経済委員会という二つの
国際機関の本部がある。さらに、中国人民解放軍が唯一の海外基地を置くジブチは目と鼻の先だ。
仏国際関係研究所によると、一九九二〜二〇一六年、エチオピアへの外国投資のうち中国は二二%を占め、
二位のサウジアラビア(一九%)を上回った。