タリバンは戦闘によって北部の諸行政区を陥落させたのではない。
諸行政区のボスたちとはちょっと前から話がついており、すべて、無血開城だったのである。

2020年2月にドーハでタリバンと米軍と反タリバンのアフガニスタン武装部族の代表が、
米軍の撤退スケジュールについて合意した。このとき非パシュトゥーンの部族の代表たちは、
米空軍からCASが得られなくなる以上、対タリバンのまじめな戦闘などムダであり、
あとはカネだけが重要だと、頭を切り替えた。その場にいた米特殊部隊コマンドの幹部は、
ハッキリと悟った。こいつらはすぐにカネで転ぶと。それが現実になったのだ。

カンダハルで、抗戦する気満々であったアフガン政府軍の特殊部隊員は、上級部隊から
一発も発砲してはならぬ、武器を捨ててタリバンに投降しろと命じられた。
しょうがなく、便衣に着替えて逃げるしかなかったという。