「安全保障と少子化問題」(エドワード・ルトワック)

日本は長年、少子化問題を議論しながら、人口減少という国家にとって真の危機を間近にしても思いきった施策を打ち出そうとしない。
そもそも将来の納税者が減少すれば、近代国家は衰退するしかないのだ。

子供がいなければ、安全保障の議論など何の意味もない。人間の人生は限りがあり、未来は子供の中にしかなく、それを守るために安全保障が必要なのである。
どんなに高度な防衛システムを完成させても、国内の子供が減り続けている国が戦争に勝てるだろうか?未来の繁栄が約束されるか?

今回、日本に来る際に乗った飛行機の席の近くに赤ちゃん連れの母親がいた。
この赤ちゃんが泣き始めたので私は席を立って彼らのそばに行った。
「私にも孫がいる。赤ちゃんは私にまかせて、トイレにでも行ってリラックスなさい。」と声をかけると母親は安堵の表情を浮かべた。

ところが、私の隣に座ってた男は不満げに「俺はわざわざビジネスクラスのチケットを買ったのに赤ん坊が煩くてかなわん。」というではないか。
私はその男に言ってやった。
「お前は馬鹿だ。赤ん坊のそばにいたくないという奴は人生のセンスが全くない人間だけだ。」と。

もし、日本が本当に戦略的な施策を打ち出すのであれば、最も優先されるべきは無償のチャイルドケアだろう。
スウェーデン、フランス、イスラエルは、高い水準のチャイルドケアシステムを整備し、実際に子供が増えている。
日本が最初に取り組むべきは包括的なチャイルドケアシステムの構築だ。まずは不妊治療の無償化。
次に出産前の妊婦の諸経費、出産費用、さらに小学校にいくまでのチャイルドケアの費用を国が負担することだ。
同政策のイスラエルでは、大卒の女性が産む子供の数は平均で2.5人に増えている。
彼女達は国の援助を必要としないが、いさとなったら無償のシステムに頼れるセーフティネットが備わっているのだ。

私は、日本の右派の人に問いたい。
あなたが真の愛国者かどうかはチャイルドケアを支持するかどうかで分かる。
民族主義者は国旗を大事にするが、愛国者は国にとって最も大事なのが子供達であることを知っているからだ。