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オワタマン転生 〜辺境の村に生まれたが、どうもルイセンコ農法っぽいのが流行ってる……〜

 僕の前世の名前は、オワタマンと言う。そう、記憶が残ったまま僕は転生したのだ。前の人生ではごくごく普通のですが民だったのだが、今世では辺境開拓民の、農家の息子として生まれた。
 最初は混乱したけど、五歳になった今ではもうだいぶこの世界にも慣れた。両親は優しく、最近可愛い妹も出来て生活は順調そのもの、かと思っていたのだけど……。前の代官が歳をのため引退し、その息子が後を継いでから、何かがおかしくなってきた。
 新しい代官は、なんというかこう……「政治的に正しい」とかよく言うのだ。そして、色々なことに口を出し始める。この時点で、僕は嫌な予感がしていた。

「麦はこうやって密集して植えろ。限られた土地を有効に使う方法だ」
「しかし御代官様、それだと経験的に実りが悪くなりますが……・」
「貴様は、この政治的に正しい方法に口答えするのか?」
「いえ、そのようなつもりは!」

 今日もまた、異論を唱えた農夫が連行されていった。連れていかれた人たちはもう戻ってこない……ということはなかったが、返ってくると決まって「政治的に正しいことは正しい」と言い始める。これ、洗脳されてるんじゃ……。
 そしてふと、前世の記憶が僕の心臓を冷たく握った気がした。この寒気は何だろう、この危機感は何だろう。これを気のせいと片付けちゃいけない、考えるんだ!
 寒気と戦いながら必死に考えた結果、僕の灰色の頭脳が一つの答えを見つけた。
 これ、ルイセンコ農法じゃん! 最悪だよ!

 こうして、僕の戦いは始まったのだった。家族と、妹を守るために。この開拓村を、守るために――