ロシア軍の行動パターンと増援の投入先から見ると、イジュームから南西へと向かう動きがこの戦域での重点になるようだが、
一方でロシア軍は相互支援を欠く複数の正面での攻撃も続けていくとみられる。

ウクライナ当局によると、イジューム地域にロシアは22個BTG(大隊戦術群)相当の戦力を集めたということだが、
主攻勢軸と並行した助攻軸を設けられなければ、この戦力集中の利点を活かすことに苦労するだろう。

ロシア軍はスロビャンシクへ向かう主攻勢と並行して、バルヴィンコヴェへ向かう攻勢も実行するだろうが、
バルヴィンコヴェは、ウクライナがロシア軍の前進を遅滞させるのに十分なほど大きい都市であり、
スロビャンシクとの距離も近いため、並行攻撃になり難い。なお、バルヴィンコヴェを取っても、
クラマトルスクからスロビャンシクへつながるルートがあるため、スロビャンシクへの連絡線を遮断できない。

結論。東部ウクライナで実施されるであろうロシア攻勢が、劇的な成果を上げるとは考え難い。

数的有利なロシア軍による複数方向からの攻撃は、ウクライナ防衛線を薄すぎるくらいに引き延ばすが、
今まで示してきたウクライナ軍の能力を考えると、ロシアの攻勢は、すべてとは言わないがその多くが、
停滞する結果に終わるだろう。なお、この評価はロシア軍の無形の要素(質的要素)を加味していない。
しかし、それらの要素は、ロシア軍による驚くべき成功を約束するものにはならないと思われる。