第15軍高級参謀木下秀明大佐

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この柳田中将の伝統ルールの破壊に、軍司令官以下幕僚はインパールに対する
外線包囲作戦の文進合撃成否の一大危機として驚愕かつ悲憤し、直ちに前進を電令したが驚くなかれ、
更に作戦中止の意見を述べ、またまた軍の命令に反し約十日のエンコが続いたことは、
外線包囲作戦上の絶大な不利益をもたらせた。
累次の軍の督戦によって、約十日間のエンコの後ようやくミコシを挙げた柳田師団長は急進を実施するかと思いの外れ、
慎重緩慢なる統制前進の方式を以て前進した。
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またしても無為にトルボンにおいて四日余りのエンコしたのである。
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かくの如き情勢に対抗するビシェンプール陣地攻撃要領は戦術の書の第一ページにあるが、
柳田師団長は第十五師団の孤軍奮闘をよそに、約一週間の攻撃準備を行い四月二十五日、
ようやく攻撃を開始した。

以下略
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