中国共産党大会に向けて〜行き詰まる習近平式統治
世紀政策研究所研究委員(慶應義塾大学教授) 小嶋華津子
(経団連)

https://www.keidanren.or.jp/journal/times/2022/0623_14.html

「この秋に中国共産党第20回党大会を控え、習近平政権は内憂外患の危機に直面している。
国内には習政権の新型コロナウイルス対応に対する不満が噴出し、外交面ではロシアのウクライナ侵攻以降、中露の同一視に基づく対中包囲網の形成が進む。」

○第1に、内外政策の失敗により党指導部内の習氏の権威が揺らげば、「党主席」なり「領袖」なりの称号を得ることはもとより、3期目の政権を安定的に運営することすら難しくなる。
かつて集団指導体制を改め習氏に権限を集中させることに合意した指導者たちの間にも、国家主席の任期規定廃止(2018年3月)や個人崇拝的傾向に対しては異論があると伝えられており、習氏の権威は盤石ではない。

○第2に、党の要職人事の采配が困難になる。
次期政治局常務委員や国務院総理の有力候補と目されてきた李強氏(上海市党委員会書記)は、上海での新型コロナ対策の失策により、昇格が危ぶまれている。
また、浙江・上海時代の部下として習氏の信頼の厚い応勇氏(前湖北省党委員会書記)が、名誉職ともいえる全国人民代表大会憲法・法律委員会副主任委員に転任するなど、ここにきて、習氏の腹心が昇格を逃すケースが報じられている。
中国政治のダイナミクスが人事に規定されていることに鑑みれば、これは習政権にとって一つの不安定要因となるだろう。
(続)