細谷雄一×東野篤子×小泉 悠「ウクライナ戦争が変えた日本の言論地図」
細谷雄一(慶應義塾大学教授)×東野篤子(筑波大学教授)×小泉 悠(東京大学先端科学技術研究センター准教授)
2024年3月13日 中央公論編集部
https://chuokoron.jp/international/124706_2.html

東野 私はもともとSNSでの攻撃をさほど深刻に捉えていなかったのですが、開戦後、想像を超える異次元の言論空間が実際に存在していたことに驚きました。「ウクライナはネオナチ国家」というロシアの典型的なプロパガンダを心底信じて、ロシアがこの国家を倒すことが世界のためになると思っている人が一定の影響力を持っていたのです。

 この状況を放置したままでは私自身の言論活動にも支障をきたすし、見ている人にも悪影響を及ぼす、と危機感を抱きました。そこで、「ウクライナはこんなにヤバい国だから、倒してもいいんだ」と平気で言う人に対しては、「どんなに問題がある国でも武力侵攻は許されない」と反論し続けることにしました。

 とはいえ、私に反論された人が意見を変えることは100%ありません。それどころか、恨みを抱いて余計に粘着してくる。それでも私の反論を見て「こう言語化すればいいんだ」「やっぱりこれが基本線なのだな」と思う人や、いかに歪んだ言説が広がっているかに気づく人もいると思うので、その輪が少しでも広がるように、と続けています。