「ブチャの虐殺」、誰もが知っているロシア軍による蛮行である。破壊、略奪、拷問、殺人、性暴力(レイプ)等など、ロシア軍が占領し、その後退却し解放された町で明らかになったことである。ロシア政府が何と言おうと国際機関、各国メデイアなどが目撃し、実態を確認している正に事実である。人口が3万人程度の地域で無抵抗の民間人が、確認されているだけで400人以上犠牲になっている。
我々日本人の持つ常識や倫理観からは想像もできないことが、現代の戦場下で現実に起こっているのである。このようなことはブチャだけで起こっているのだろうか。間違いなく他の占領地域でも起こっていると思われる。国際機関は確実に確認されたこと以外公表しない。ウクライナにおける民間人の犠牲者は8千人超、子供の連れ去りは約1万6千人から2万人といわれているが、氷山の一角であると思われる。ウクライナ東部、南部の占領地域はキーウ周辺の解放された地域と比べて格段に人口が多い。ロシアはこれらの占領地区を勝手に自国領土とし、武力もしくは武力を背景とした支配により同化政策を実行している。先に挙げた略奪にとどまらず、不動産を含む有形無形の資産を接収している。このような接収を組織的に行うチームの存在も報道された。ありとあらゆる不法・犯罪行為をれっきとした行政機関などが実行しているのである。抵抗すれば問答無用で拷問、殺害、投獄、強制移動などを行う。しかも、これらは国家という壁でおおわれているため、明らかにはならない。
侵攻当初、東部マリウポリなどでの悲惨な戦争の現状を見て、命が失われないように早くロシアの管理下に入ったほうがいいという能天気なことをいう者を散見した。ひとたびロシアの占領を許せば、不条理を受けいれることになる。一旦は命が助かるかもしれないが、家屋財産は没収、家族・妻子とは生き別れ、虐待、殺害、性被害等などがあっても受け入れなければならない。特に無垢の子供の将来を不当に拘束し、屈曲させる行為も甘んじて受け入れることになる。
武力による侵攻を受け、占領されるということは、人間の尊厳にかかわることを含み、まったくの不条理であろうと受け入れざるを得なくなるということを銘記すべきである。