この蒸し暑さと、肌を伝う汗の感触―ふと記憶がベトナム中部の密林へと遡る。
グリーンベレーの任務で潜入したランソンの山岳地帯、背中にしみ込む汗は敵の眼と同じく油断ならぬものだった。
葉陰で息を潜め、匂いで敵を読む。
今の日本の暑さなど、あの地獄の蒸気釜に比べればまだ“生ぬるい”。
だがこの汗が、あの頃の鋭さを忘れるなと、肌に訴えかけてくるのだ。