今回の大井とされる映像は、1945年制作の宣伝映画に収録された複数カット編集の一部であり、同一時期・同一場所を連続的に記録したことが確実な一次史料とはいえない。そのため「1944年当時に大井が重雷装艦として訓練していた」ことを直接裏付ける証拠性は低い。むしろ注目すべきは、沖縄戦期に1年以上前の訓練映像をリアルタイムのニュース映像として虚偽の流用をし、帝国海軍が依然として戦力を維持しているかのように見せた点である。

すなわち映像の史料的価値は、当時の状況を忠実に伝える事実記録としてではなく、戦時宣伝の手法や編集意図を理解するための資料として位置づけられるべきである。