>>373
ロシアにおける「純ロシア人」と「黄色人種系ロシア人」(極東やシベリアの先住民族、中央アジア出身者など)の経済格差は、単に民族的な能力差ではなく、都市/地方、教育資本、法的地位、差別といった複数の要因が複雑に絡み合った結果だと考えるべきだ。

まず都市と地方の格差が決定的。モスクワやサンクトペテルブルクに富と権力が集中し、スラヴ系がその果実を独占する一方、極東やシベリアは「資源供給地」として扱われ、黄色人種系の住民はインフラ不足と低賃金労働に縛られる。ここに教育格差が重なる。スラヴ系は大学進学やエリートコースに乗りやすいが、地方の少数民族は高等教育にアクセスしにくく、世代を超えて貧困が固定化される。

さらに中央アジアからの移民労働者は、法的に権利が制限され、安い労働力として使い捨てられる。彼らが存在することで低賃金サービスが維持され、純ロシア人にとっては「安く便利な生活」が可能になるため、格差を改善するインセンティブが生まれない。

加えて差別の黙認が構造を補強する。警察による職務質問や不当逮捕は黄色人種系を標的にする傾向が強いが、スラヴ系多数派はそれを「自分たちの安全のため」と受け止め、問題視しない。結果としてロシア社会は「スラヴ優位の階層社会」を温存し続けている。

重要なのは、これは共産主義に固有の問題ではなくロシア固有の伝統的支配様式に根差している点だ。秘密警察、密告社会、そして少数民族や異民族を従属させる統治モデルは帝政ロシアの時代から繰り返されており、ソ連解体後も改善の兆しは乏しい。つまり、黄色人種系に格差があるのは彼らが劣っているからではなく、純ロシア人多数派にとって「優遇する理由が存在しない」ためだ。

要するに、ロシアは多民族国家を名乗りながら実態は「スラヴ優位・他民族は下層労働力」という階層システムを固定化している。この構造が続く限り、格差は縮まらず、不満と分断はむしろ拡大するだけだろう。