>>972
具体的な調査方法については、キエフ国際社会学研究所(KIIS)やRating Groupの報告が公開されている。たとえばKIISは2022年1月、「Public Opinion in the Divided Donbas」調査でドンバス両側(政府支配地域+非支配地域)約4,000人を対象に電話インタビュー(CATI方式)を実施。質問は「紛争の責任」「地域の最終的な地位」「ロシア侵攻への態度」などで、成人をランダム抽出して行われた。非政府支配地域では通信経由の聞き取りで、アクセス可能な範囲に限定される。

同じくRating Groupは2022年3月、全国1,200人にモバイル無作為抽出で電話調査を実施し、信頼性を担保するため質問票と標本構成を公開している。対象は18歳以上の成人で、クリミアや完全占領地を除くウクライナ全域。抽出方法や誤差率(±2.5%)も記載されており、国際的にも標準的な手法だ。

一方、占領下のドネツクやルハンスク全域で自由な現地調査を行うことは不可能であり、KIIS自身も「完全な代表性は保証できない」と明記している。調査精度を下げている要因は、ロシア側が外部取材を徹底して制限している点にある。もし本当に親露派が多数なら、BRICSなど友好国メディアによる独立取材を許せば済む話だが、それが行われていない。

つまり「誰に何件聞いたか」は公表されており、KIISで約4,000件、Ratingで約1,200件。質問内容も公開済み。一方ロシアの“住民投票”や“街頭インタビュー”は被調査者や質問文が不明で、検証不能。したがって、方法論的に透明なのはウクライナ側の調査であり、完全な代表性がないとしても、少なくともデータの存在と検証可能性があるという点で比較にならない。