『将棋世界9月号』大山名人から受けた三度の盤外戦術 ーー内藤國雄ーー

私は三十代に入ってから三度経験した
「終盤戦。残り時間が少なくなって私に勝ちがありそうで勝てない場面が続いた。ふと気がつくと、大山さんの右手が脇息に乗せられていて指を閉じては1本ずつ開いていた。
その手首がじりじりと前に進んでくるので参った」
「はっきり“意思”を感じたのは、その1年ほどたった頃の終盤戦。戦線が4筋〜3筋に移ると、動く右手指が左手に移ったのだ。イヤでも目に入り、露骨な闘志に辟易した」
「こうした体験がたった3局と少ないのは、2人の棋風の違いで勝つときは完勝、負けるときは完敗という結末が多かったからだと思う」