WEB本の雑誌
作家の読書道 第235回:新川帆立さん
2021/11/26
新川:『黒革の手帖』です。それと、『霧の旗』という、兄が殺人容疑で死刑
になりそうになって、無実を信じる妹が弁護士を訪ねる話があって。すごく面
白いんですが、読み終わるとモヤモヤするんですよ。このモヤモヤはなんだろ
うと思って新潮文庫の文庫解説を読むと、これは社会ではなく個人の問題なん
だということが書かれてあって、「ああ、確かにそう読めるな」と思うし、
「そう読むと傑作だな」と分かるんです。文庫解説ってこういうもののために
あるんだなと思いました。
 短篇集の『黒い画集』も好きです。怖い世界と隣り合わせの日常を書いてい
るんですが、接点の作り方が上手いんですよね。正直、最初に松本清張さんを
読んだ時、宮部さんのほうが上手いなと思ったんです。後に生まれた世代っ
て、そういうことってありますよね。でも読み進めていくうちに、松本清張は
本当にすごいし、本当に面白いと思ってリスペクトするに至りました。もしも
『このミス』で受賞できていなかったら、その後はずっと松本清張賞に送り続
けていたと思います。
 それと、最近では、文庫解説のお仕事の依頼があったので小泉喜美子さんの
作品を3週間で20冊くらい集中して読んだんですが、すごく上手くて。

1991年2月生まれ。